施設向けIDDSI適合監査チェックリスト:食事提供・調理・記録の検証
IDDSI(国際嚥下食品標準化イニシアチブ)への準拠は、入居者の安全を守るだけでなく、誤嚥関連インシデントが発生した際の記録上の防衛としても機能します。本チェックリストは施設が四半期ごとに自己監査を実施するための実用ツールです。
1. IDDSI施設適合監査の目的
| 目的 |
詳細 |
| 入居者安全 |
誤った食形態提供による誤嚥・窒息事故の防止 |
| 記録訴訟対策 |
インシデント発生時に「適切な手順に従った」ことを証明 |
| スタッフ能力確認 |
全員がIDDSI 7段階を正しく識別・実施できることを担保 |
| 継続的改善 |
監査結果を次の研修計画に反映するPDCAサイクルの起点 |
2. 監査項目一覧
A. 食形態の表示と情報管理
| 項目 |
確認内容 |
合格基準 |
| A1 |
各入居者の食形態指示書(IDDSI レベル記載)が最新版か |
直近3か月以内に更新 |
| A2 |
食形態変更の記録(いつ・誰が・根拠は)が残っているか |
SLPまたは医師の署名あり |
| A3 |
食事トレイ・皿に食形態ラベルが貼付されているか |
全トレイに明示 |
| A4 |
厨房への食形態指示伝達が書面またはシステムで行われているか |
口頭伝達のみは不合格 |
B. 調理手順の標準化
| 項目 |
確認内容 |
合格基準 |
| B1 |
各IDDSIレベルの調理SOP(標準作業手順書)が整備されているか |
レベル3〜7それぞれ存在 |
| B2 |
とろみ剤の希釈濃度が製品ごとにグラム数で明記されているか |
「少々」等のあいまい表記なし |
| B3 |
食材変更時(旬・入荷状況による代替)に再テストが実施されるか |
変更記録と再テスト記録が連動 |
| B4 |
アレルギー対応と食形態対応が混同されていないか |
個別対応表が別管理 |
C. テスト実施の確認
| テスト |
実施頻度 |
記録様式 |
| フォーク圧テスト(レベル4/5向け) |
新メニュー導入時・週1回抜き打ち |
写真記録推奨 |
| スプーン傾け/チルトテスト(レベル3向け) |
新調理担当者研修時・週1回 |
チェックシートに記録 |
| シリンジ流量テスト(液体レベル向け) |
とろみ剤ロット変更時・月1回 |
流量(mL/10秒)を数値記録 |
| フォールドテスト(レベル6向け) |
月1回 |
写真記録推奨 |
フォーク圧テスト実施手順(概要)
- 対象食品をティースプーンに盛り、フォークの突起で上から押す
- 突起が食品の表面を突き破る前に食品全体が変形する → 合格(レベル4)
- 形が残る → レベル5以上の可能性。再調理または設定変更
シリンジ流量テスト実施手順(概要)
- 10mLシリンジに液体を入れ、10秒間自然流下させる
- 流下量が1〜4mL → レベル1(わずかにとろみ)
- 流下量が4mL以上 → 水に近い可能性。とろみ剤量を調整
3. スタッフ知識確認(年2回)
| 確認内容 |
方法 |
合格基準 |
| IDDSI 7段階の説明 |
口頭または筆記テスト |
全レベルの特徴を正しく説明 |
| フォーク圧テストの実施 |
実技確認 |
合否判定を正確に行う |
| 食形態変更の判断フロー |
ロールプレイ |
SLP・管理栄養士への適切な連絡タイミングを示す |
| アレルギー対応と食形態指示の違い |
口頭確認 |
混同がないこと |
4. 食形態変更の意思決定プロセス記録
食形態変更は必ず以下の記録を残します:
【食形態変更記録】
変更日:___ 変更者(職種・氏名):___
変更前IDDSI:固形__ / 液体__
変更後IDDSI:固形__ / 液体__
変更理由:□SLP評価結果 □医師指示 □本人希望 □家族希望 □状態変化
根拠資料:□SLP記録(日付___)□嚥下評価(日付___)□カンファレンス記録
本人/家族への説明:□実施(日付___)□同意書あり
次回評価予定日:___
5. 日本固有の対応:JSDR UDF-IDDSI対応表
日本摂食嚥下リハビリテーション学会(JSDR)の嚥下調整食学会分類2021と、UDFコード、IDDSIの対応を把握しておくことが重要です。
| 学会分類2021 |
UDFコード |
IDDSI固形 |
IDDSI液体 |
| 嚥下調整食0j |
— |
レベル3 |
— |
| 嚥下調整食1j |
— |
レベル3〜4 |
— |
| 嚥下調整食2-1 |
— |
レベル4 |
— |
| 嚥下調整食2-2 |
— |
レベル4〜5 |
— |
| 嚥下調整食3 |
UDF区分3 |
レベル5 |
— |
| 嚥下調整食4 |
UDF区分1〜2 |
レベル6 |
— |
| とろみ(薄) |
— |
— |
レベル1 |
| とろみ(中) |
— |
— |
レベル2 |
| とろみ(濃) |
— |
— |
レベル3 |
6. 栄養管理加算との連携
施設サービス費における関連加算
- 栄養マネジメント強化加算:管理栄養士がIDDSI準拠の食形態を栄養ケア計画に明記し、月2回以上モニタリングを実施する場合に算定可
- 再入所時栄養連携加算:入院中の食形態記録(IDDSI表記)を引き継ぎ、施設での提供に反映させた場合
7. 監査スコアカード(四半期用)
| カテゴリ |
最高点 |
今回点 |
前回点 |
改善/後退 |
| A. 表示・情報管理(A1〜A4) |
20 |
|
|
|
| B. 調理手順(B1〜B4) |
20 |
|
|
|
| C. テスト実施 |
20 |
|
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|
| D. スタッフ知識 |
20 |
|
|
|
| E. 変更記録 |
20 |
|
|
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| 合計 |
100 |
|
|
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80点以上:適合 / 60〜79点:要改善計画 / 60点未満:緊急対応
まとめ
IDDSI監査は「点検のための点検」ではなく、入居者が毎日安全に食事できる体制を組織として保証する仕組みです。テストの数値記録・スタッフ知識の定期確認・変更プロセスの文書化を習慣化することで、インシデント発生時の対応力と訴訟リスクの軽減を両立できます。