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IDDSI レベル4(ピューレ状)完全ガイド:日本の嚥下調整食との対応と調理の実践

要約(TL;DR): IDDSI レベル4(ピューレ状/Puréed & Extremely Thick)とは、スプーンで形を保てるほどの固さがあり、なめらかで均質、塊のない食形態です。咀嚼が不要で、舌と口蓋による押しつぶしも最小限で飲み込める状態を指します。日本の嚥下調整食分類2021ではコード2-1(均質なピューレ・ペースト・ミキサー食等)が対応し、UDFでは区分4(かまなくてよい)に相当します。本記事ではレベル4の定義・検査方法・よくある失敗、和食ベースの調理実践、市販介護食品の活用まで一冊分のノウハウを凝縮して解説します。


IDDSI レベル4とは何か

IDDSI(International Dysphagia Diet Standardisation Initiative)のフレームワークにおいて、レベル4は食品として最も細かい形態のひとつです。レベル3(なめらかな流動食)より固く、レベル5(みじん切り・しっとり食)より軟らかい位置にあります。

レベル4の名称は英語で “Puréed / Extremely Thick”(ピューレ状/極めてとろみあり) と表記され、飲み物と食品の両方にまたがる唯一のレベルです。飲み物としてのレベル4は「極めてとろみが強く、ストローやカップでは摂取できない」状態を指し、食品としてのレベル4は「スプーンで形を保ちながら盛り付けられ、なめらかで均質な食品」を指します。

レベル4が必要とされる方の特徴

レベル4は咀嚼を完全にバイパスし、口腔内での加工をほぼ必要としない形態です。したがって、食道・咽頭の嚥下機能がある程度維持されていることが前提となります。重度の咽頭期嚥下障害(誤嚥リスクが高い状態)の方の食形態は、言語聴覚士(ST)による嚥下機能評価に基づいて個別に決定されます。


レベル4の定義:満たすべき6つの条件

IDDSIの公式フレームワークでは、レベル4の食品について以下の特性を定めています。

  1. 形を保てる(Holds its shape)
    スプーンで盛り付けた際、皿上で形が崩れずにとどまる。絞り袋(パイピングバッグ)で絞り出したとき、形が維持される。

  2. 流れない(Does not flow)
    皿を斜めにしても液状に広がらない。スプーンからこぼれ落ちるのではなく、一塊でズルっと落ちる。

  3. なめらか・均質(Smooth & homogeneous)
    塊、繊維、皮、種、硬い粒子が一切ない。目に見える不均一な部分がない。

  4. 液体が分離しない(No liquid separation)
    皿の底や食品の周囲に液体が溜まっていない。水分と固形分が分離していない。

  5. フォークの歯を通り抜けない(Cannot be piped through fork prongs)
    フォークのすき間から押し出されるほどゆるくない(それはレベル3)。

  6. スプーンに過度にくっつかない(Falls cleanly off spoon)
    スプーンを傾けると、きれいに一塊で落ちる。ゴム状にくっつきすぎない。

これらの条件を満たさない食品はレベル4として提供できません。たとえば、なめらかに見えても水分が分離しているピューレ(例:水切り不十分な豆腐ペースト)や、フォーク滴下テストで流れすぎるポタージュ(レベル3相当)は対象外です。


レベル4の検査方法

IDDSIでは、特別な機器を使わずキッチンにある道具でレベル4を確認する2つの検査を定めています。

フォーク滴下テスト(Fork Drip Test)

  1. 対象の食品をスプーンひとすくい分(約15〜20g)を、フォークの背(凸面)の上に乗せる
  2. フォークを水平から90度に立てて、食品が落ちるのを観察する
  3. 判定:
    • ゆっくり滴り落ちる → ✅ レベル4合格
    • 液体のように流れ落ちる → ❌ レベル3(ゆるすぎる)
    • まったく落ちず、ゴム状にくっつく → ❌ レベル5相当またはゲル化が強すぎる

スプーン傾けテスト(Spoon Tilt Test)

  1. 対象の食品を大スプーンで山盛りにすくう
  2. スプーンを横に90度ゆっくり傾ける
  3. 判定:
    • 一塊でスルッと滑り落ちる → ✅ レベル4合格
    • 流れ落ちる → ❌ レベル3(ゆるすぎる)
    • くっついて落ちない → ❌ 付着性が高すぎる(嚥下後の口腔内残留リスク)

皿チェック(Plate Separation Check)

盛り付けから5分後に皿の底を観察します。食品の周囲に透明な液体(水分)が1mm以上染み出していれば、液体分離が起きており、レベル4の要件を満たしません。片栗粉・ゲル化剤の追加、または水分量の調整が必要です。


日本標準との対応関係

IDDSI・嚥下調整食分類2021・UDF 対応表

観点 IDDSI レベル4 嚥下調整食分類2021 コード2-1 嚥下調整食分類2021 コード2-2 UDF 区分4
名称 ピューレ状 / Puréed ピューレ・ペースト・ミキサー食 やわらか食・ソフト食 かまなくてよい
塊の有無 塊なし(必須) 塊なし 塊なしが原則 基準なし(嚥下容易)
形の保持 スプーンで形を保つ 形を保つことを要求 形を保たなくてもよい場合あり 製品ごとに異なる
液体分離 分離不可(必須) 分離不可が望ましい 規定なし 規定なし
検査方法 フォーク滴下/スプーン傾け 官能評価・外観目安 官能評価 物性試験(硬さ値)
咀嚼の要否 不要 不要 不要 不要

重要な差異について
嚥下調整食分類2021のコード2-1はIDDSI レベル4と最も対応が近いですが、完全に同一ではありません。JSDR(日本摂食嚥下リハビリテーション学会)は液体分離の禁止を明示的な必須要件とはしていないのに対し、IDDSIでは液体分離がある食品はレベル4に該当しないと明確に定めています。国際的な発信や文書においては、IDDSIレベルを明記することを推奨します。

コード2-2(やわらか食等)は、形の保持がより緩やかに定義されており、食品によってはIDDSI レベル5に近い場合があります。担当のSTや管理栄養士による個別評価が不可欠です。


和食ベースのレベル4調理実践

日本食はピューレ化に適した素材が豊富で、レベル4の食事を栄養豊富かつ風味よく提供しやすい食文化です。以下に主要な和食カテゴリーと実践的なテクニックを示します。

おかゆ・ご飯系

全粥ミキサー食はレベル4の代表的な主食です。しかし調製方法を誤るとレベル3(流れすぎ)またはレベル5(粒が残る)になりやすい食品でもあります。

茶碗蒸し

茶碗蒸しは、調製の工夫次第で出来合いでレベル4に近い特性を持つ料理です。卵液と出汁の比率、蒸し加減が重要です。

魚料理

白身魚(たら・かれい・鮭)は繊維が少なくピューレ化に適しています。

野菜・芋類

かぼちゃ・さつまいも・じゃがいも・にんじんは糖分とでんぷん質が豊富で、ピューレ化に最も適した野菜類です。

豆腐・大豆料理

絹ごし豆腐はほぼレベル4の特性を持つ食品ですが、そのままでは液体分離のリスクがあるため注意が必要です。

だし・スープ(飲み物としてのレベル4)

飲み物としてのレベル4(極めてとろみあり)は、スプーン以外では摂取できない粘度です。


市販介護食品(UDF・介護食)の活用

市販の介護食品を活用することで、在宅介護における調理負担を軽減できます。レベル4相当の市販品を選ぶ際の目安を以下に示します。

レベル4に対応する可能性が高い市販品

キユーピー「やさしい献立」シリーズ(区分4)
UDF区分4(かまなくてよい)に対応した製品ラインナップで、おかず・主食・デザートと幅広く展開されています。なめらかなペースト状の製品はIDDSI レベル4に近い特性を持つものが多いですが、製品ごとに物性が異なるため、スプーン傾けテストによる確認が推奨されます。

ホリカフーズ「介護食シリーズ」(区分3〜4)
レトルトパウチ形式で保存が容易。区分4製品はなめらかなペースト状の料理が中心で、災害時の備蓄にも活用されています。

ヘルシーフード「ソフティア」「トロミアップ」等のとろみ剤
とろみ剤は製品によってでんぷん系・キサンタンガム系・グアーガム系に大別されます。市販のみそ汁やスープに添加してレベル4相当のとろみ飲料を自宅で手軽に調製できます。

明治「メイバランス」「リハやわらかゼリー」等の栄養補助食品
栄養補助目的のゼリー食品には、レベル4相当の製品が多く含まれます。主食・主菜の摂取量が不足する際の栄養補完に活用できます。

市販品を選ぶ際の確認ポイント

  1. UDF区分の確認: 区分4(かまなくてよい)を基本的な目安とする
  2. パッケージ開封後のテスト: 提供前にスプーン傾けテストを実施して液体分離がないか確認する
  3. 加熱後の物性変化: レトルト製品を電子レンジで加熱した後は粘度が変化する場合があるため、加熱後に再確認する
  4. 塩分・カロリーへの注意: 市販介護食品は塩分が高めのものがあるため、腎臓病・高血圧を合併している方は担当医・管理栄養士に相談する

よくある失敗と対処法

失敗1:液体が分離する

原因: 水分量が多すぎる・ゲル化剤が少ない・でんぷんを加熱しきれていない
対処: 片栗粉・ゼラチン・寒天・市販のゲル化剤を適量追加して再加熱。裏ごしをした後は冷蔵庫で一時間静置し、再度テストを実施する

失敗2:塊や繊維が残る

原因: ミキサーの時間不足・ストレーナーで裏ごしをしていない
対処: ミキサーは最低3分(可能なら5分)撹拌し、細かいストレーナーまたは裏ごし器で必ず濾す。葉物野菜・ごぼう・こんにゃく類はどれほど加熱・撹拌しても繊維が残ることがあるため、メニューから除外するか少量のみ使用する

失敗3:流れすぎてレベル3になる

原因: 水分を加えすぎた・野菜の水分を除去しきれていない
対処: ゲル化剤の追加、または一旦鍋で加熱して水分を蒸発させる。特にかぼちゃ・にんじんは加熱後に水分が出るため、ミキサー前に水分量を少なめに設定する

失敗4:付着性が高すぎてスプーンから落ちない

原因: ゲル化剤の入れすぎ・でんぷん質が多すぎる
対処: 少量の出汁または水を加えて伸ばし、再テスト。ゼラチン系ゲル化剤は温度が下がると固まるため、提供時の温度管理も重要

失敗5:時間経過で粘度が変化する

原因: でんぷん系ゲル化剤(片栗粉など)は経時的に糊化が進む
対処: 食事提供10分以内に最終テストを実施する。保温ケースに入れて長時間保持する場合はキサンタンガム系ゲル化剤を選択すると安定性が高い


まとめ

IDDSI レベル4(ピューレ状)は、咀嚼が困難または不可能な嚥下障害のある方に提供する食形態の中で、国際的に最も厳密に定義された基準のひとつです。本記事の要点を以下に整理します。

定義と条件
スプーンで形を保ち、なめらか・均質で塊がなく、液体が分離しないことが必須要件です。フォーク滴下テストとスプーン傾けテストで確認できます。

日本標準との対応
嚥下調整食分類2021のコード2-1と最も近い対応関係にありますが、液体分離の取り扱いなど細部に差異があります。UDF区分4が市販品を選ぶ際の目安となります。

和食での実践
おかゆミキサー食・茶碗蒸し・白身魚ピューレ・かぼちゃペーストなど、日本食材はレベル4に適した素材が豊富です。片栗粉・絹ごし豆腐をうまく活用することで液体分離を防ぎ、なめらかで均質な食品を調製できます。

市販品の活用
キユーピー「やさしい献立」区分4等の市販介護食品は在宅介護の負担軽減に有効ですが、提供前のスプーン傾けテストによる確認が推奨されます。

専門家への相談
食形態の処方は言語聴覚士(ST)が、栄養管理は管理栄養士が担います。特に食事変更・新たな症状(むせ・体重減少等)がある場合は、必ず担当の医療専門職に相談してください。


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参考文献・出典

本記事はIDDSIフレームワーク(レベル4)、JSDR嚥下調整食分類2021、UDF基準を要約・解説したものです。臨床での実践においては、必ず最新の各公式ガイドラインをご参照ください。


免責事項(Disclaimer): 本記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的アドバイスではありません。嚥下障害の評価・食事形態の処方は、必ず担当医・言語聴覚士・管理栄養士にご相談ください。本記事の情報に基づく行動によって生じた損害について、当サイトおよびEditorial Team(Editorial Team)は責任を負いません。


最終更新: 2026-04-18 · ライセンス: CC BY 4.0 · 監修・提供: Editorial Team — 嚥下障害食の専門家チーム


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