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IDDSIレベル6(軟飯・一口サイズ)完全ガイド

IDDSIレベル6とは何か

IDDSI(国際嚥下食標準化イニシアチブ)レベル6(Soft & Bite-Sized)は、嚥下障害(えんげしょうがい)のある方のために国際的に標準化された食形態区分のひとつです。日本語では「軟らかい一口サイズ食」または「軟飯・一口サイズ食」と呼ばれます。

レベル6の最大の特徴は、食べ物のサイズがすべての方向で15mm以下に切りそろえられており、かつ軟らかく、歯を使わなくても舌と口蓋(こうがい)の圧力だけでつぶすことができるという点です。また、飲み込みを助けるための別途の水分(とろみ付き液体など)を必要とせず、食材自体が十分な水分を含んでいるか、ソースや煮汁でコーティングされています。

IDDSIフレームワークは全8段階(レベル0〜7)で構成されており、レベル6はその上位から2番目に位置します。通常食(レベル7)の一歩手前であり、軽度から中等度の嚥下障害や咀嚼障害のある方が対象となります。


レベル6の物理的基準

サイズ基準

レベル6の食品は、縦・横・高さのすべての方向において15mm以下でなければなりません。これは成人の親指の第一関節程度の大きさを目安にするとわかりやすいです。

ただし、例外として舌でつぶれるほど軟らかい食材(豆腐、茶碗蒸しなど)は、やや大きめでも評価の観点から許容される場合があります。基本は15mmが絶対的な上限です。

テクスチャー(食感)基準

レベル6の食品が満たすべきテクスチャー条件は以下のとおりです。

水分・潤滑性基準


フォーク圧テスト(Fork Pressure Test)

IDDSIでは、テクスチャーを確認するためにフォーク圧テストが推奨されています。

  1. 食材の上にフォーク(または親指)を置く
  2. 通常の親指の圧力(約140g相当)でゆっくり押す
  3. 食材が潰れればレベル6合格
  4. 潰れずに抵抗があればレベル7以上(通常食に近い)

このテストは家庭でも道具なしで実施できるため、在宅介護において非常に有用な評価手段です。


レベル5との違い:「ミンチ・モイスト」との比較

IDDSIレベル5(Minced & Moist)とレベル6は隣接しており、混同されやすい区分です。以下の表で違いを整理します。

表1:レベル5とレベル6の比較

項目 レベル5(ミンチ・モイスト) レベル6(軟飯・一口サイズ)
食材の形 細かく刻まれている(4mm以下が目安) 一口サイズの塊が残っている(15mm以下)
サイズ 約4mm以下(粒状) 約15mm以下(一口大)
食感 均一なミンチ状・ペースト状に近い 軟らかい塊。形が残っている
必要な口腔機能 舌でつぶせる最低限の力でOK 舌と口蓋での圧迫で潰せる力が必要
日本食の例 細かく刻んだ軟らかい野菜の煮物、ミンチ肉のあんかけ 豆腐の煮物、煮魚(一口大)、茶碗蒸し
対象者 舌の力が弱い・咀嚼困難が強い 軽度〜中等度の咀嚼困難、舌の力がある程度保たれている

レベル7との境界:通常の軟食との違い

レベル7(Regular Easy to Chew)は通常の軟食であり、歯または義歯を使って咀嚼することが前提です。レベル6との違いは「歯を必要とするかどうか」にあります。

たとえば、炊きたての白ご飯はレベル7(ある程度の咀嚼が必要)ですが、十分に水分を含ませた「軟飯」はレベル6に相当します。焼き魚は通常レベル7以上ですが、煮魚(煮付け)であれば調理法によってレベル6に対応できる可能性があります。


対象となる方

レベル6は以下のような状態の方に適しています。

反対に、以下の状態の方にはレベル6は適さない場合があります。


日本食におけるレベル6対応

日本の食文化は多様であり、レベル6に対応しやすい食材と、工夫が必要な食材があります。

表2:日本食のレベル6対応早見表

カテゴリ 食材・料理 レベル6可否 備考
大豆製品 絹ごし豆腐 適 そのままで軟らかく水分も豊富
大豆製品 木綿豆腐(煮含め) 適 煮ることで軟らかさ増す
大豆製品 厚揚げ 要工夫 中まで柔らかく煮る必要あり
卵料理 茶碗蒸し 適 均一に軟らかく水分豊富
卵料理 半熟卵(一口大) 適 白身が軟らかければOK
卵料理 固茹で卵 不適 白身が硬くパサつく
魚介類 煮付け(白身魚) 適 十分に煮て一口大に切る
魚介類 焼き魚 不適 パサつき・繊維が強い
魚介類 刺身(新鮮・軟らかい) 要工夫 繊維方向に注意。マグロ赤身は可
肉類 蒸し鶏(低温調理) 適 低温で調理し水分保持
肉類 鶏肉のあんかけ煮 適 ソースで潤滑性を確保
肉類 牛・豚ロースの焼き物 不適 噛み切れない・繊維が強い
野菜類 かぼちゃの煮物 適 十分に煮れば舌でつぶせる
野菜類 大根・人参の煮物 適 芯まで柔らかく煮ること
野菜類 ほうれん草のおひたし 要工夫 細かく刻む・繊維を断ち切る
野菜類 ゴボウ・れんこん 不適 繊維質が強く舌でつぶせない
穀物 軟飯(米2合に水3〜4合) 適 通常ご飯より水分多め
穀物 全粥 要確認 粒の残り方による。レベル5〜6の境界
穀物 通常白飯 不適 粘着性が高く塊になる・硬い
デザート プリン・ゼリー 適 軟らかく水分豊富
デザート ようかん 適 軟らかく均一なテクスチャー
デザート せんべい・クッキー 不適 硬く水分なし

レベル6を達成するための調理法

低温・長時間調理

肉類はとくに調理法が重要です。通常の加熱では繊維が硬くなりがちな鶏胸肉も、60〜65℃の低温で30〜40分加熱することで、繊維が壊れず水分を保ったまま軟らかく仕上がります。圧力鍋を使う場合は短時間でより軟らかくなりますが、過度な加熱でパサつく場合もあるため注意が必要です。

煮含め・あんかけ

野菜や豆腐は、だし汁でじっくり煮含めることが基本です。片栗粉を使ったあんかけにすることで食材の表面をコーティングし、潤滑性を高めることができます。これはレベル6の「水分・潤滑性基準」を満たすうえで非常に有効な技法です。

蒸し調理

茶碗蒸し、蒸し魚、蒸し豆腐などの蒸し料理は、水分を逃さず食材を軟らかく仕上げるのに最適です。蒸し器がない場合は電子レンジ蒸しでも代用できますが、加熱ムラに注意してください。

切り方の工夫

繊維質の多い野菜(ほうれん草、セロリなど)は、繊維を断ち切る方向に細かく刻むことで口の中でのバラバラ感を軽減できます。また、食材によっては繊維の方向に対して垂直に切ることで、舌でのつぶしやすさが向上します。

ソース・煮汁の活用

食材をそのまま提供するだけでなく、適度なとろみをつけた煮汁やソースを添えることで、食材の水分不足を補い、飲み込みやすさを向上させることができます。ただし、とろみ付き液体をソース代わりに使う際は、IDDSI飲料のとろみレベルとのバランスに注意が必要です。


市販のレベル6対応製品(日本国内)

日本では嚥下調整食の市販品が充実しており、以下のような製品がレベル6相当として販売・使用されています(2026年時点)。

主な市販品一覧

メーカー シリーズ名 特徴
明治 とろとろシリーズ 嚥下調整食2〜4対応。やわらか加工済み食品。
ネスレ日本 ハートフルシリーズ ソフト食・きざみ食対応。温めるだけで提供可能。
ホリカフーズ おいしくミキサーシリーズ ペースト〜ソフト食。ただしレベル5中心のものが多い。
キューピー やさしい食シリーズ 介護食。やわらかプラス等でレベル6相当品あり。
ヘルシーフード ソフトミールシリーズ 病院・施設向け冷凍ソフト食。レベル6対応品あり。
日清医療食品 エバースマイルシリーズ 見た目は通常食に近いが、テクスチャーはソフト食対応。

なお、製品のパッケージや説明書には「嚥下調整食学会分類2021」の区分(コード1j〜コード4)が記載されている場合があります。IDDSIレベル6は日本摂食嚥下リハビリテーション学会分類2021のコード4(かたさ:やわらか食)にほぼ相当します。


家庭でのレベル6適合チェック

自宅で調理した食事がレベル6を満たしているかどうかを確認するための実践的な手順を紹介します。

チェックステップ

  1. サイズ確認:食材のすべての方向が15mm以下になっているかを確認する。定規やものさしを使うか、親指の第一関節(約15mm)を目安にする。

  2. フォーク圧テスト:フォークの背または親指で食材の上から軽く押す。通常の親指の力で潰れれば合格。

  3. 水分・潤滑性確認:食材表面が乾燥していないか、あんかけや煮汁でコーティングされているかを確認する。パサつきがあればソースを加える。

  4. 粘着性チェック:口の中でまとまりすぎて飲み込みにくくなっていないか確認。過度な粘着性は誤嚥リスクを高めることがある。

  5. 温度確認:適切な温度で提供すること。冷えた食材はテクスチャーが変化する場合がある(特にゼラチン系)。


施設・在宅でのレベル6メニュー例

朝食メニュー例

昼食メニュー例

夕食メニュー例


まとめ

IDDSIレベル6(Soft & Bite-Sized)は、軽度〜中等度の嚥下障害・咀嚼障害のある方に対して、食の楽しみを最大限に保ちながら安全な食事を提供するための重要な食形態区分です。

レベル6の核心は3つのポイントに集約されます。

  1. サイズ:すべての方向で15mm以下
  2. テクスチャー:舌と口蓋の圧力だけで潰せる軟らかさ
  3. 水分・潤滑性:食材自体またはソース・煮汁による十分な水分

日本食はもともと煮物・蒸し物・豆腐料理など、レベル6に対応しやすい食文化を持っています。適切な切り方と調理法を組み合わせることで、多くの日本食料理をレベル6に対応させることが可能です。

施設介護・在宅介護のどちらにおいても、IDDSIフレームワークを活用した食形態管理は、誤嚥性肺炎の予防・栄養状態の改善・QOL(生活の質)向上に大きく貢献します。定期的に言語聴覚士(ST)や管理栄養士と連携し、個々の嚥下機能に合わせた食形態選択を行うことが推奨されます。


本記事はIDDSI(国際嚥下食標準化イニシアチブ)フレームワーク2019年改訂版および日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021を参照して作成されています。個別の食形態判定は必ず専門家(言語聴覚士・管理栄養士)の評価に基づいて行ってください。