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嚥下調整食レシピ7選——家庭で作れる日本食IDDSI Level 4・5(コード3・4)対応

TL;DR: 嚥下障害(えんげしょうがい)のある方の食事を毎日準備するのは、介護者にとって大変な作業です。このページでは、日本の家庭料理7品を嚥下調整食(JSDR コード3・4 / IDDSI Level 4・5)に調整するレシピと調理のコツを解説します。食材の選び方から、とろみ剤の使い方、盛り付けの工夫まで、初心者の方でもすぐに実践できる内容です。


はじめに:嚥下調整食を作る前に確認すること

レシピを試す前に、以下の点を確認してください。

  1. 食形態レベルは言語聴覚士(ST)または主治医が決定したものを使用する。自己判断でレベルを変えることは誤嚥リスクを高める可能性があります。
  2. とろみの濃度も同様に専門職の指示に従ってください。このレシピ集は標準的な目安を示していますが、個人差があります。
  3. 食事中は必ず正しい姿勢(座位または30〜60度頭部挙上)を保ってください。
  4. 複数の食材を一緒にミキサーにかけると見た目・味が落ちることがあります。食材は種類ごとに別々に処理してから盛り付けることをお勧めします。

IDDSI・JSDR対応表

IDDSI レベル JSDR 分類コード 形態の目安 主な適応
Level 4(ペースト状) コード2-1 / 2-2 スプーンで盛れるなめらかなペースト。スプーンから落ちない 舌運動が著しく低下している方
Level 5(細かく軟らかい) コード3 4mm以下の小さな塊。舌で容易に押しつぶせる 軽度の咀嚼・嚥下障害のある方
Level 6(軟らかくひと口大) コード4 15mm以下のひと口大。フォーク・スプーンで切れる 軽度咀嚼障害があるが嚥下は比較的良好な方

レシピ 1:とろとろ全粥(Level 4 / コード2-2対応)

お粥は嚥下調整食の基本中の基本です。ご飯粒が残ると誤嚥の原因になるため、全体をなめらかなペーストにするのがポイントです。

材料(1人分)

作り方

  1. だし汁を鍋に入れて中火で温める。
  2. ご飯を加え、弱火で15〜20分煮る(ご飯の粒が完全に崩れるまで)。
  3. ミキサーまたはハンドブレンダーでなめらかになるまで撹拌する。
  4. 必要に応じてとろみ剤を加え、IDDSI Level 4(スプーンから落ちない程度)に調整する。
  5. 塩で味を整えて盛り付ける。

テクスチャー確認ポイント

アレンジ


レシピ 2:茶碗蒸し(Level 4 / コード2-1対応)

茶碗蒸しは、卵・だし汁が主成分で、自然になめらかなLevel 4テクスチャーになります。特別な調整が不要で、嚥下調整食として最適な一品です。

材料(1人分)

作り方

  1. 卵をボウルに割り入れ、泡立てないようにしながら(空気を入れない)菜箸でほぐす。
  2. だし汁・しょうゆ・塩・みりんを加えて混ぜる。
  3. 茶こしまたはザルで漉す(均一なテクスチャーのため、この工程は省略しない)。
  4. 器に注ぎ、ラップをかけて蒸し器に入れる(または電子レンジ対応容器に入れてふんわりとラップをかける)。
  5. 蒸し器の場合: 強火で2分→弱火で12〜15分蒸す。
  6. 電子レンジの場合: 500W×2〜3分(様子を見ながら加熱)。
  7. 竹串を刺して澄んだ汁が出れば完成(濁っていれば加熱不足)。

注意事項


レシピ 3:さばの味噌煮ペースト(Level 4 / コード2-2対応)

さばの味噌煮は日本の定番料理ですが、そのままでは誤嚥リスクがあります。煮崩れるまで柔らかく調理し、ペースト状にすることで安全に提供できます。

材料(1人分)

作り方

  1. さばの骨を完全に取り除く(小さな骨も含む。誤嚥・窒息防止のため厳守)。
  2. 鍋に水・味噌・しょうゆ・みりん・砂糖・生姜を合わせて中火で煮溶かす。
  3. さばを加え、弱火で15〜20分、身が完全に崩れるまで煮る。
  4. 粗熱が取れたら、煮汁ごとミキサーまたはフードプロセッサーでなめらかになるまで撹拌する。
  5. 水分が多すぎる場合は鍋に戻して弱火で煮詰め、テクスチャーを調整する。

骨に関する重要注意

骨が少しでも残っていると、窒息・穿孔のリスクがあります。ミキサー処理前に必ず骨がないことを確認してください。缶詰のさばを使う場合は骨ごと柔らかくなっているため、取り扱いが容易です(柔らかい骨は処理後に識別困難になるため、缶詰でも可能なら取り除くことを推奨します)。


レシピ 4:かぼちゃのポタージュ(Level 3〜4 / コード2-1対応)

かぼちゃは自然な甘みがあり、ビタミン・食物繊維も豊富。なめらかなポタージュに仕上げることで、Level 3〜4のテクスチャーになります。

材料(1人分)

作り方

  1. かぼちゃを2〜3cm角に切り、耐熱容器に入れてラップをかけ電子レンジ600W×5分加熱(またはやわらかくなるまで蒸す)。
  2. かぼちゃが温かいうちにミキサーに入れ、牛乳を加えてなめらかになるまで撹拌する。
  3. 鍋に移して弱火で温め、塩で味を整える。
  4. バターを加えると風味が増す(カロリー補充にも)。
  5. 濃度を確認し、IDDSI FlowテストでLevel 3(>8ml残留)またはLevel 4に調整する。

とろみレベルの調整

仕上げの目安 牛乳の量 IDDSI Level
とろとろ(飲める濃度) 150ml以上 Level 3
もったり(スプーンで盛れる) 100ml程度 Level 4

レシピ 5:鶏のそぼろ(Level 5 / コード3対応)

そぼろは鶏ひき肉を細かく調理したもので、IDDSI Level 5(4mm以下の塊)に自然に近い形になります。お粥ややわらか煮麺に乗せてタンパク質を補給するのに最適です。

材料(1人分)

作り方

  1. フライパンまたは鍋にだし汁・しょうゆ・みりん・砂糖・生姜汁を合わせる。
  2. 鶏ひき肉を加え、4〜5本の菜箸を使って細かくほぐしながら中火で炒り煮にする。
  3. 水分が飛んでパラパラになるまで炒り続ける(しかし乾燥しすぎないこと。水分がなくなったら誤嚥しやすくなる)。
  4. 少量のだし汁を加えて全体を湿らせ、スプーンで盛ったときまとまりがあることを確認する。
  5. フォーク/スプーンで簡単に分離できることを確認する(IDDSI Level 5の判定基準)。

Level確認テスト


レシピ 6:豆腐とほうれん草の白和え(Level 5 / コード3対応)

白和えは木綿豆腐をベースにした和の定番料理。豆腐の柔らかさと野菜の細かいみじん切りが、自然にLevel 5に近いテクスチャーを実現します。

材料(1人分)

作り方

  1. 豆腐はキッチンペーパーに包んで30分以上水切りする(水分が多いと食塊が崩れやすくなる)。
  2. ほうれん草は葉の部分のみ使い、茎は除く。熱湯で2〜3分下茹でし、冷水に取って絞り、細かくみじん切りにする(2〜3mm程度)。
  3. 豆腐をすり鉢またはフードプロセッサーでなめらかなペースト状にする。
  4. すりごま・砂糖・しょうゆ・塩を加えてよく混ぜる。
  5. ほうれん草のみじん切りを加えて和える。
  6. 全体がまとまり、スプーンで形を作れることを確認する。

注意点


レシピ 7:大根と鶏肉の炊き合わせ(Level 6 / コード4対応)

Level 6(軟らかくひと口大)は、噛む力がある程度残っている方向けです。大根と鶏肉を徹底的に柔らかく煮込むことで、フォーク・スプーンで切れるやわらかさになります。

材料(1人分)

作り方

  1. 大根は1〜1.5cm角に切る(Level 6の上限は15mm)。面取りして角を丸くするとさらに食べやすくなる。
  2. 大根を鍋に入れ、水から中火で15〜20分下茹でする(竹串がすっと通るまで)。
  3. 鶏もも肉を1〜1.5cm角に切る。
  4. だし汁・しょうゆ・みりん・砂糖を鍋に合わせ、大根と鶏肉を入れ、弱火で30〜40分煮る。
  5. 大根はフォークで容易に押しつぶせる柔らかさになっているか確認する(爪が白くなるほど押しても食材が割れる程度)。
  6. 鶏肉は繊維に沿って手で割ける柔らかさになっているか確認する。なっていない場合はさらに煮る。

Level確認テスト


調理の共通ポイント

とろみ剤の選び方

市販のとろみ剤には主に以下の種類があります。

種類 特徴 注意点
デンプン系(片栗粉・コーンスターチ) 加熱が必要・温度により粘度変化 冷めると変化しやすい
グアーガム系 加熱不要・透明に近い 少量でも効果大・入れすぎに注意
キサンタンガム系 加熱不要・温度に安定 最も安定したとろみが出る
市販介護用とろみ剤(混合タイプ) 使いやすい・計量しやすい 製品によって特性が異なる

重要: とろみ剤は一度に少量ずつ加え、混ぜてから15〜30秒待ってから濃度を確認する。特にキサンタンガム系は加えた直後より時間が経ってから濃くなることがある。

調理機器の選び方

機器 用途 レベル目安
ハンドブレンダー 鍋の中で直接処理できる Level 3〜4
ミキサー(ブレンダー) 大量処理・なめらかに仕上がる Level 3〜4
フードプロセッサー 粗めのミンチ・細かく均一に Level 5
すり鉢 豆腐・野菜のペースト Level 4〜5

保存と衛生管理


よくある失敗と対処法

失敗 原因 対処法
なめらかにならない ミキサー処理が不十分、水分不足 処理時間を延ばす・水分を加える
とろみが足りない とろみ剤の量が少ない、混ぜ方が不十分 少量ずつとろみ剤を追加して再確認
とろみが濃すぎる とろみ剤の入れすぎ 温かいだし汁やお湯を少量加えて薄める
食材が分離する とろみ処理が不十分、温度変化 とろみ剤を使って全体をまとめる
味が薄くなる 水分を加えた分、味が薄まる 加える水分をだし汁にする・調味料を少し増やす
ご飯粒が残る 撹拌不足、ご飯が硬すぎた 十分加水して再加熱してから再度撹拌

市販の嚥下調整食品の活用

毎日の自炊が困難な場合は、市販の嚥下調整食品を活用するのも有効な選択肢です。日本ではJSDR嚥下調整食分類2021またはユニバーサルデザインフード(UDF)区分で表示された製品が多数販売されています。

市販品を選ぶ際は以下を確認してください。


引用・参考資料

  1. 日本摂食嚥下リハビリテーション学会 医療検討委員会 (2021). 嚥下調整食分類2021. 日本摂食嚥下リハビリテーション学会誌, 25(2), 135–149. https://www.jsdr.or.jp/
  2. IDDSI Framework (2019). International Dysphagia Diet Standardisation Initiative. https://iddsi.org/
  3. 農林水産省・日本介護食品協議会 (2023). ユニバーサルデザインフード(UDF)自主規格. https://www.udf.jp/
  4. 長寿科学振興財団 健康長寿ネット (2023). ミキサー食の作り方のポイント・おすすめレシピ. https://www.tyojyu.or.jp/
  5. Cichero JAY et al. (2017). Development of international terminology and definitions for texture-modified foods and thickened fluids used in dysphagia management. Dysphagia, 32(2), 293–314.
  6. 岩手県栄養士会 (2022). 嚥下調整食モデル献立集. 岩手県栄養士会.

この記事は教育目的のコンテンツです。個々の患者さんの食形態・とろみレベルは、必ず言語聴覚士(ST)・管理栄養士・医師など有資格の専門職の評価と指示に基づいて決定してください。このページは医療アドバイスではありません。


最終更新日: 2026-04-18 · ライセンス: CC BY 4.0 · 提供: Editorial Team — 香港を拠点とするソーシャルエンタープライズとして、IDDSI準拠の介護食の製造・普及に取り組んでいます。法人・施設向けのお問い合わせは [email protected] まで。