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EAT-10嚥下障害スクリーニングツール完全ガイド:実施方法・判定基準・臨床活用

EAT-10(Eating Assessment Tool-10)は、嚥下障害の自己記入式スクリーニングツールとして世界で最も広く使われているツールの一つです。10項目の質問に回答するだけで、嚥下に問題がある可能性を素早く把握できます。言語聴覚士(SLP/ST)への紹介判断の初期フィルターとして、在宅・施設・外来など幅広い場面で活用されています。


EAT-10とは


EAT-10の10項目(印刷用)

以下の10の質問について、それぞれ0〜4の点数をつけてください。

0 = 問題なし 1 = 少し問題あり 2 = 問題あり 3 = かなり問題あり 4 = ひどく問題あり

番号 質問 スコア(0〜4)
1 飲み込むことで体重が落ちた  
2 飲み込むことが外食の妨げになっている  
3 液体を飲み込むのに努力がいる  
4 固形物を飲み込むのに努力がいる  
5 錠剤を飲み込むのに努力がいる  
6 飲み込むことが辛い(痛みを伴う)  
7 食べることの楽しみが飲み込みの問題で減っている  
8 飲み込むとき、食べ物がのどに引っかかる感じがする  
9 食事中に咳が出る  
10 飲み込むことがストレスになっている  

合計点: _____ 点

合計3点以上の場合は、医師または言語聴覚士に相談してください。


判定基準と参照感度・特異度

Belafsky ら(2008年)の検証研究(n=700名)によるデータ:

指標 数値
感度(sensitivity) 86%(嚥下障害を持つ人を正しく検出できる確率)
特異度(specificity) 73%(嚥下障害がない人を正しく除外できる確率)
カットオフ ≥ 3点
内的一貫性(Cronbach α) 0.90(高信頼性)
再検査信頼性 0.72(良好)

感度86%は「見逃しの少なさ」を意味し、スクリーニングツールとして適切な水準です。ただし特異度73%は「偽陽性がやや多い」ことも示しており、スコア≥3でも必ずしも嚥下障害とは限りません。精密検査(VF・FEES)による確定が推奨されます。


疾患別スコア分布(参考値)

疾患 典型的なEAT-10スコア範囲
健常高齢者 0〜2(大部分)
脳卒中後(急性期) 10〜25
パーキンソン病(中等度) 8〜20
頭頸部癌(治療後) 15〜30
COPD(重症) 5〜15
認知症(中等度) 評価困難(代理評価が必要)

EAT-10の限界と注意点

  1. 認知機能が低下した患者には適用が難しい: 自己記入が前提のため、重度認知症や意識障害のある患者には使えません。この場合は介護者・家族による代理記入(proxy version)を検討しますが、主観的バイアスが入ります。
  2. 誤嚥の有無は判定できない: EAT-10は「嚥下の問題感覚」を測るもので、実際の誤嚥・気道侵入を直接評価するものではありません。
  3. 食事テクスチャーの影響: 既に軟食・ペースト食に移行済みの患者はスコアが低く出ることがあります。

他のスクリーニングツールとの比較

ツール 所要時間 必要なトレーニング 感度 適した設定
EAT-10 2〜3分 なし(自己記入) 86% 外来・在宅・施設
GUSS(Gugging Swallowing Screen) 5〜10分 中程度(手順習熟) 100%(急性期) 急性期病院
3オンス水飲みテスト(3-OWT) 2〜3分 最低限 73〜76% 急性期・外来
反復唾液嚥下テスト(RSST) 30秒 最低限 98%(高齢者) 在宅・施設
改訂水飲みテスト(MWST) 2〜3分 最低限 70% 在宅・施設

使い分けの指針:


在宅介護者・施設看護師による実施ガイド

実施手順:

  1. 被評価者が自ら記入できる場合は、静かな環境でひとつずつ質問を読み上げながら記入を補助
  2. 自己記入が困難な場合は、直近1週間の観察をもとに介護者が代理記入
  3. 合計3点以上の場合は、かかりつけ医または担当看護師に報告し、言語聴覚士への相談を依頼

施設での定期スクリーニング活用:


いつ直接STに紹介すべきか

以下の状況ではEAT-10を介さず、直接言語聴覚士または医師へ紹介してください:


本記事は情報提供を目的としており、医療診断・治療の代替となるものではありません。スクリーニングで異常が疑われた場合は、必ず専門家にご相談ください。

ライセンス: CC BY 4.0 — Editorial Team