MNA-SFとは
簡易栄養状態評価表(かんいえいようじょうたいひょうかひょう、MNA-SF:Mini Nutritional Assessment Short-Form)は、高齢者の低栄養(ていえいよう)リスクを6項目の質問で短時間にスクリーニングするツールです。世界的に最も広く使用されている高齢者向け栄養スクリーニングツールの一つであり、特養(特別養護老人ホーム)・老健(介護老人保健施設)・在宅介護の現場で活用されています。
嚥下障害を持つ患者は低栄養のリスクが特に高いため、MNA-SFによる定期的なスクリーニングが推奨されます(日本嚥下医学会、www.jsdr.or.jp)。
MNA-SFの6項目と採点方法
MNA-SFは以下の6項目で構成されます:
| 項目 | 質問内容 | スコア |
|---|---|---|
| A | 過去3か月間に食欲不振・消化器系の問題・咀嚼・嚥下困難などにより食事量が減少しましたか? | 0〜2点 |
| B | 過去3か月間の体重減少 | 0〜3点 |
| C | 移動能力 | 0〜2点 |
| D | 過去3か月間に精神的ストレスや急性疾患がありましたか? | 0または2点 |
| E | 神経・精神的問題 | 0〜2点 |
| F1 | BMI(体格指数) | 0〜3点 |
| F2 | (BMI測定不能の場合)ふくらはぎの周囲長(CC) | 0または3点 |
スクリーニング合計スコアの判定:
- 12〜14点:栄養状態良好(低栄養リスクなし)
- 8〜11点:低栄養リスクあり(詳細な栄養評価を推奨)
- 0〜7点:低栄養(管理栄養士による介入を要す)
嚥下障害との関係
MNA-SF項目Aは、嚥下困難(えんげこんなん)による食事量の減少を直接問う項目です。嚥下障害があると:
- 食べるのに時間がかかり疲労して食事量が減る
- 安全に食べられる食形態が限られ摂取できる食品の種類が減る
- 食事が苦痛になり食欲が低下する
これらが複合的に低栄養につながります。嚥下障害が疑われる場合は、MNA-SFスクリーニングとともにSTへの紹介を同時に検討することが重要です。
施設での実施手順
特養・老健での定期スクリーニング
多くの施設では、以下のタイミングでMNA-SFを実施しています:
- 入所時:ベースラインの把握
- 3〜6か月ごと:定期評価
- 体重減少・食事摂取量低下が観察されたとき:随時評価
実施者は看護師・介護士・管理栄養士が担当することが多く、わずか5〜10分で完了します。
在宅での実施
訪問看護師・ケアマネジャー・管理栄養士が在宅訪問時にMNA-SFを使用します。介護保険の「居宅療養管理指導」において管理栄養士が実施するケースが増えています。
MNA-SFの限界と補完
MNA-SFはスクリーニングツールであり、低リスクでも実際に低栄養である「偽陰性」が生じることがあります。以下の場合は詳細な評価が必要です:
- 食事観察で摂取量が目標の75%未満
- 血液検査でアルブミン3.5g/dL以下(ただし炎症の影響を受けることに注意)
- 嚥下障害が疑われる場合
詳細な栄養評価では、MNA完全版(MNA-Full)または他の栄養評価ツール(MUST、NRS-2002など)を使用します。
嚥下調整食とMNA-SFの連動
MNA-SFで低栄養リスクが検出された場合、IDDSIおよびJDS-C 2021に基づく食形態の確認と調整が必要です。
低栄養リスクがある嚥下調整食患者への介入:
| IDDSI レベル | JDS-C 2021コード | 栄養管理上の注意点 |
|---|---|---|
| レベル3〜4 | コード1〜2 | 水分・エネルギーが不足しやすい。栄養補助食品を活用 |
| レベル5 | コード3 | まとまりがあるがエネルギー密度が低い場合あり |
| レベル6〜7 | コード4 | 通常食に近く管理しやすい |
詳細はIDDSIフレームワークを参照してください。嚥下調整食のエネルギー密度確保のために、少量でエネルギーが高い食品(MCT油・蛋白質強化素材など)の活用が推奨されます。
多職種での情報共有
MNA-SFの結果は介護記録・ケアプランに記録し、多職種チームで共有します:
| 職種 | 役割 |
|---|---|
| 管理栄養士 | 詳細な栄養評価・食事提供計画の立案 |
| 言語聴覚士(ST) | 嚥下機能評価・食形態の決定 |
| 看護師 | 定期的な体重測定・食事観察 |
| 介護士 | 食事介助中の摂取量記録・口腔ケア |
| 医師 | 総合的な医学的管理 |
参考文献・引用
- ASHA(米国言語聴覚士協会). Adult Dysphagia. https://www.asha.org/practice-portal/clinical-topics/adult-dysphagia/
- IDDSI(国際嚥下調整食分類). The IDDSI Framework. https://www.iddsi.org/framework
- Logemann JA, et al. (1998). PubMed PMID: 26315994
- 日本嚥下医学会. https://www.jsdr.or.jp/
- 日本嚥下調整食学会. 嚥下調整食学会分類2021. 2021.
- Rubenstein LZ, et al. (2001). Screening for undernutrition in geriatric practice. J Gerontol Med Sci, 56, M366-372.
本記事は医療・介護専門職および家族介護者への情報提供を目的としています。個々の治療方針は担当医・管理栄養士にご相談ください。