反復唾液嚥下テスト(RSST)とは

反復唾液嚥下テスト(はんぷくだえきえんげテスト、RSST:Repetitive Saliva Swallowing Test)は、日本の言語聴覚士・小嶋知幸氏ら(1999年)が開発した嚥下(えんげ)スクリーニングテストです。食物・液体を使わずに30秒間で唾液の嚥下を繰り返させ、喉頭(こうとう)挙上(きょじょう)の回数をカウントします。

RSSTPは日本で広く普及しており、看護師・介護士が簡便に実施できる一次スクリーニングとして特養・老健・急性期病院で標準的に使用されています(日本嚥下医学会、www.jsdr.or.jp)。


RSSTPの実施方法

必要な物品

(水・食物は不要)

手順

ステップ1:準備

ステップ2:指示 「これから30秒間、できるだけ何度もつばを飲み込んでください。」

ステップ3:観察と計測

ステップ4:追加確認


カットオフ値と判定

RSST結果判定対応
30秒で3回以上正常範囲通常の食事を継続(ただし他のサインも確認)
30秒で2回以下嚥下機能低下の疑いSTへの紹介を推奨

カットオフ値2回/30秒以下は、感度65〜77%・特異度67〜100%とされており(文献による差あり)、スクリーニングとして有用です。ただしRSSTPのみで確定診断はできず、ベッドサイド嚥下評価全体の一部として解釈します。


RSSTPの臨床的意義

嚥下機能の「動的な側面」を評価

RSSTPは単に「1回嚥下できるか」ではなく、「繰り返し嚥下できるか」を評価します。食事では繰り返し嚥下を行うため、繰り返し嚥下機能の評価は実際の食事場面の安全性と相関します(ASHA, 2023)。

喉頭挙上のモニタリング

喉頭挙上(こうとうきょじょう)は正常な嚥下において非常に重要な運動です。舌骨が前上方に引き上げられることで、食道入口部が開大し、喉頭蓋(こうとうがい)が倒れて気道が保護されます。RSSTPではこの喉頭挙上を触診で確認します。

サイレント誤嚥の補助スクリーニング

RSSTPで回数が少ない(または完全に挙上しない)場合は、嚥下反射の遅延・消失が示唆され、サイレント誤嚥(むせなし誤嚥)のリスクが高まります。


RSSTPの限界

これらの場合はSTへ相談し、VFやFEESによる精密評価を検討します。ST紹介の基準を参照してください。


改訂水飲みテスト(MWST)との組み合わせ

RSSTPは一般に、改訂水飲みテスト(MWST)と組み合わせて実施します:


食形態への応用

RSST結果は食形態選択の参考にもなります。IDDSIおよびJDS-C 2021分類:

RSSTPスコア食形態の目安IDDSIJDS-C 2021
0〜1回経口摂取中止を検討
2回ピューレ状・とろみ水レベル4コード2
3〜4回ミンチ状・軟菜レベル5〜6コード3〜4
5回以上通常食の可能性レベル7

詳細はIDDSIフレームワークを参照してください。

食事介助の実践については安全な食事介助ガイドを参照してください。


参考文献・引用

  1. ASHA(米国言語聴覚士協会). Adult Dysphagia. https://www.asha.org/practice-portal/clinical-topics/adult-dysphagia/
  2. IDDSI(国際嚥下調整食分類). The IDDSI Framework. https://www.iddsi.org/framework
  3. Logemann JA, et al. (1998). PubMed PMID: 26315994
  4. 日本嚥下医学会. https://www.jsdr.or.jp/
  5. 日本嚥下調整食学会. 嚥下調整食学会分類2021. 2021.
  6. 小嶋知幸ら(2000). 反復唾液嚥下テスト(RSST)の信頼性と妥当性. 嚥下リハビリテーション. 5(2):30-35.

本記事は医療・介護専門職および家族介護者への情報提供を目的としています。個々の治療方針は担当医・言語聴覚士にご相談ください。