嚥下造影検査(VF)とは

嚥下造影検査(えんげぞうえいけんさ、VF:Videofluoroscopic Swallowing Study、またはVFSS)は、バリウム(造影剤)を含む食物・液体を嚥下(えんげ)する様子をX線透視で動画撮影する検査です。嚥下の各フェーズ(口腔期・咽頭期・食道期)を視覚的に評価できる、嚥下評価の「ゴールドスタンダード(標準的検査)」とされています。

日本嚥下医学会(www.jsdr.or.jp)は、VFとFEES(嚥下内視鏡)を嚥下機能の客観的評価における2大ツールとして推奨しています。


VFの適応

以下のような場合にVFが推奨されます:


患者準備と禁忌

検査前の準備

  1. インフォームドコンセント:放射線被曝・造影剤使用について説明
  2. 食事制限:原則として検査前3〜4時間の絶食(施設によって異なる)
  3. 服薬確認:造影剤(バリウム)との相互作用がある薬剤の確認
  4. 移動・座位保持の確認:X線透視台に座れるかの確認(車椅子対応機器もあり)

禁忌・注意事項


検査の手順

1. 検査体位の設定

通常は側面像(lateral view)と正面像(AP view)の両方を撮影します:

2. 食形態の段階的評価

VFでは通常、IDDSIのレベルに沿って食形態を段階的に評価します:

IDDSI レベルJDS-C 2021コードVFでの評価ポイント
レベル0(薄い液体)—(水)咽頭通過速度・誤嚥タイミング
レベル2〜3(とろみ)とろみ水とろみによる誤嚥減少効果
レベル4(ピューレ)コード2口腔内処理・咽頭残留
レベル6(軟らかい固形)コード4咀嚼・食塊形成・通過

詳細はIDDSIフレームワークを参照してください。

3. 姿勢変化・代償戦略のテスト

VFはリハビリ介入の効果を確認するためにも活用されます:


結果の読み方

誤嚥(aspiration)と侵入(penetration)

侵入(penetration):食物・液体が声帯(せいたい)レベルより上の喉頭内に入る状態(喉頭侵入)。

誤嚥(aspiration):食物・液体が声帯より下(気管・気管支)に入る状態。

サイレント誤嚥(silent aspiration):誤嚥が起きているが咳が出ない状態。特に神経疾患・高齢者で多く、VF/FEESによる客観的評価なしには発見できません。

Penetration-Aspiration Scale(PAS)

VFとFEESで共通して使用されるRosenbek PASは1〜8点のスケールで評価します:

スコア意味
1気道侵入なし(正常)
2声門上侵入・排除
3声門上侵入・排除されず
4声帯接触・排除
5声帯接触・排除されず
6声門下誤嚥・排除(咳で)
7声門下誤嚥・部分排除
8声門下誤嚥・排除されず(サイレント誤嚥)

嚥下タイミングの評価

VFでは以下のタイミング指標を測定します:


VF報告書の主要項目

STが作成するVF報告書には通常以下が含まれます(ST報告書の読み方も参照):

  1. 口腔期所見:舌運動・食塊形成・口腔内保持
  2. 咽頭期所見:嚥下反射開始タイミング・喉頭閉鎖・咽頭収縮・残留
  3. 食道期所見:食道入口部開大・食道内逆流
  4. 誤嚥・侵入:PASスコア・タイミング(嚥下前・嚥下中・嚥下後)
  5. 代償技術の効果:姿勢変化・とろみ付加の効果
  6. 推奨食形態:IDDSI・JDS-C 2021に基づく提案

VFとFEESの使い分け

状況推奨検査
食道期の評価が必要VF
ベッドサイドでの評価FEES
放射線被曝を避けたいFEES
嚥下前後の咽頭・喉頭残留を詳しく見たいFEES
嚥下全体のダイナミクスを見たいVF
移動困難・重症患者FEES

ST紹介のタイミングと紹介基準も参照してください。


検査後のケア

食事介助の実践については安全な食事介助ガイドを参照してください。


参考文献・引用

  1. ASHA(米国言語聴覚士協会). Adult Dysphagia. https://www.asha.org/practice-portal/clinical-topics/adult-dysphagia/
  2. IDDSI(国際嚥下調整食分類). The IDDSI Framework. https://www.iddsi.org/framework
  3. Logemann JA, et al. (1998). PubMed PMID: 26315994
  4. 日本嚥下医学会. https://www.jsdr.or.jp/
  5. 日本嚥下調整食学会. 嚥下調整食学会分類2021. 2021.

本記事は医療・介護専門職および家族介護者への情報提供を目的としています。個々の治療方針は担当医・言語聴覚士にご相談ください。