IDDSIガイド:嚥下調整食・とろみ飲料の全8レベル完全解説
IDDSIとは
IDDSI(International Dysphagia Diet Standardisation Initiative/国際嚥下調整食標準化イニシアチブ)は、嚥下困難者向けの食事テクスチャーと飲料とろみを国際的に統一する取り組みです。2019年に正式なフレームワーク(IDDSI Framework)が確立され、日本では2021年以降、嚥下調整食学会分類2021とともに導入が進んでいます。
IDDSIが必要な理由
IDDSIが普及する以前、「刻み食」「ミキサー食」「とろみあり」などの表現は施設・病院・国によって意味が異なっていました。これにより、転院・転所・在宅移行時に食形態の誤解が生じ、誤嚥事故につながるリスクがありました。IDDSIはこの問題を解決するための共通言語です。
IDDSIフレームワーク:全8レベル
IDDSIはLevel 0〜4が飲料(とろみ)、Level 3〜7が食事(テクスチャー)を表します。Level 3・4は飲料と食事の両方に対応しています。
飲料(Drinks)
Level 0 ── 薄い(Thin)
特性:水・お茶・果汁などの一般的な液体。とろみなし。 対象:嚥下機能が正常または軽度低下のみの方。 日本語表記の目安:「水分制限なし」
Level 1 ── わずかにとろみがある(Slightly Thick)
特性:水よりもわずかに抵抗感がある。コップから飲める。口の中での制御はほとんど変わらない。 シリンジテスト目安:10mlシリンジで10秒後に1〜4ml残存 対象:ごく軽度の口腔・咽頭機能低下がある方。 学会分類2021対応:該当なし(学会分類はLevel 2以上を対象)
Level 2 ── 軽いとろみ(Mildly Thick)
特性:コップから飲んでも流れが遅く感じられる。ストローでの飲用が若干力を要する。 シリンジテスト目安:10mlシリンジで10秒後に4〜8ml残存 対象:軽〜中程度の口腔・咽頭機能低下がある方。 学会分類2021対応:「薄いとろみ」(学会分類とろみ分類1)に相当
Level 3 ── 中間のとろみ(Moderately Thick)
特性:スプーンですくって傾けるとゆっくり流れ落ちる。ストローでの飲用は困難。舌と口蓋で制御しやすい。 シリンジテスト目安:10mlシリンジで10秒後に8ml以上残存(ほとんど落ちない) 対象:中程度の口腔・咽頭機能低下がある方。 学会分類2021対応:「中間のとろみ」(学会分類とろみ分類2)に相当
Level 4 ── 濃いとろみ(Extremely Thick)
特性:スプーンで形が残る程度の粘度。コップ・ストローで飲むことは困難。スプーンで食べる液状食。 シリンジテスト:シリンジ内でほとんど動かない 対象:重度の口腔・咽頭機能低下がある方。 学会分類2021対応:「濃いとろみ」(学会分類とろみ分類3)に相当
食事(Foods)
Level 3 ── ミキサー食・ブレンドされた食事(Liquidised)
特性:滑らかで均一。スプーンで形が保てる程度の粘度。塊がなく、流れ落ちない。 調製方法:食材をミキサーで完全に撹拌し、必要に応じてとろみ剤・ゲル化剤で粘度を調整。 対象:咀嚼・舌送り機能が著しく低下している方。 学会分類2021対応:「嚥下調整食0t」「嚥下調整食1j」の一部に相当
Level 4 ── ペースト・泥状食(Pureed)
特性:均一で柔らかいペースト状。スプーンで形が保たれる。傾けると少しずつ落ちる。塊・繊維・液体の分離なし。 調製方法:ミキサー後にゲル化剤や増粘剤で整形。型に入れて形をつけることも可能(モールドフード)。 フォークテスト:フォークの歯の間から均一に押し出される。 対象:咀嚼力は最小限、舌による押し潰しが主体の方。 学会分類2021対応:「嚥下調整食2-1」に相当
Level 5 ── 細かく柔らかくほぐれる食事(Minced & Moist)
特性:4mm以下の小さな塊。柔らかく湿潤でほぐれやすい。まとまりがあり、口の中でバラバラになりにくい。 フォークテスト:フォークの歯の間から容易に押し出されるが、形が残る。 対象:軽〜中程度の咀嚼機能低下があるが、ある程度の舌運動が可能な方。 学会分類2021対応:「嚥下調整食2-2」に相当
Level 6 ── 柔らかくかみ砕ける食事(Soft & Bite-Sized)
特性:1.5cm角以下にカット済みの柔らかい食事。前歯や歯ぐきで噛み切れる程度の硬さ。 フォークテスト:フォークの歯で容易に押し潰せる(力を要しない)。 対象:咀嚼力は低下しているが、舌の送り込み・喉への送り込みはある程度可能な方。 学会分類2021対応:「嚥下調整食3」に相当
Level 7 ── 一般食(Regular / Easy to Chew)
特性:通常の一般食。ただし「Easy to Chew」としてカットの工夫や調理方法の調整(柔らかく煮る等)を行う。 対象:嚥下機能に問題はないが、咀嚼力の低下がある方。または嚥下困難のない方。 学会分類2021対応:「嚥下調整食4」(介護食)に相当
IDDSIと嚥下調整食学会分類2021の対応表
| IDDSI Level | IDDSI名称(英語) | 日本語名称(IDDSI) | 嚥下調整食学会分類2021 |
|---|---|---|---|
| 0 | Thin | 薄い | — |
| 1 | Slightly Thick | わずかにとろみ | — |
| 2 | Mildly Thick | 軽いとろみ | とろみ分類1(薄いとろみ) |
| 3 (飲料) | Moderately Thick | 中間のとろみ | とろみ分類2(中間のとろみ) |
| 4 (飲料) | Extremely Thick | 濃いとろみ | とろみ分類3(濃いとろみ) |
| 3 (食事) | Liquidised | ミキサー食 | 嚥下調整食0t・1j(一部) |
| 4 (食事) | Pureed | ペースト食 | 嚥下調整食2-1 |
| 5 | Minced & Moist | 細かくほぐれる食 | 嚥下調整食2-2 |
| 6 | Soft & Bite-Sized | 柔らかい一口大食 | 嚥下調整食3 |
| 7 | Regular / Easy to Chew | 一般食(軟食含む) | 嚥下調整食4 |
注:IDDSI と学会分類2021は完全な1対1対応ではなく、概念的な整合性をもとに照合したものです。詳細は日本摂食嚥下リハビリテーション学会(JSDR)の公式資料を参照してください。
テクスチャーの確認方法
フォークテスト(Fork Test)
食事のテクスチャーレベル(Level 4〜6)の確認に使用します。
- 通常のフォーク(4歯)を食品の表面に置く
- 軽く押し下げる(指先で軽く押せる程度の力)
- Level 4(ペースト):フォークの歯の間から均一に押し出される。形が崩れる。
- Level 5(細かくほぐれる):フォークの歯の間から押し出されるが、小さな塊が残る。
- Level 6(柔らかい一口大):フォークで容易に押し潰せる。形を保てる。
シリンジテスト(Syringe Test)
飲料のとろみレベル(Level 1〜4)の確認に使用します。
必要なもの:10mlルアースリップシリンジ(注射器の先端のないタイプ)
- 飲料を10mlシリンジに吸引する
- シリンジを垂直に立て、プランジャー(押し子)を外す
- 10秒間静置し、残存量を記録する
| 残存量(10秒後) | IDDSIレベル |
|---|---|
| 1〜4ml | Level 1(わずかにとろみ) |
| 4〜8ml | Level 2(軽いとろみ) |
| 8ml以上 | Level 3(中間のとろみ) |
| ほぼ動かない | Level 4(濃いとろみ) |
日本でのIDDSI普及状況
- 2021年:IDDSI日本語版公式翻訳が日本摂食嚥下リハビリテーション学会より公開
- 嚥下調整食学会分類2021の改訂にあたり、IDDSIとの整合性が図られた
- 急性期病院・回復期リハビリ病院を中心に導入が進んでいる
- 在宅介護・介護施設への普及はこれから加速する段階
- 厚生労働省の栄養ケアマネジメント加算(2021年介護報酬改定)において、食形態評価の記録が義務化されたことでIDDSI・学会分類2021への注目が高まっている
関連ページ
最終更新:2026年5月13日
参考資料:IDDSI公式ウェブサイト(www.iddsi.org)、日本摂食嚥下リハビリテーション学会「嚥下調整食学会分類2021」
免責事項:このページは教育目的の情報提供であり、個別の医療アドバイスではありません。食形態の決定は言語聴覚士・管理栄養士の専門的評価に基づいて行ってください。