なぜ早期紹介が重要か

嚥下(えんげ)障害への早期介入は、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)・低栄養・脱水の予防に直結します。ASHAの報告によれば、嚥下障害が未治療のまま放置されると、誤嚥性肺炎のリスクが5〜9倍に上昇するとされています(ASHA, 2023)。

しかし、日本の急性期病院や施設では、嚥下障害のサインを見逃したり、「様子を見よう」と判断が遅れるケースが少なくありません。本記事では、言語聴覚士(ST)に紹介すべき具体的なサインと手順を解説します。


即時紹介が必要な緊急サイン

以下の場合は直ちに担当医・STに報告してください:


通常の紹介が必要なサイン

以下のサインが1つ以上あれば、1週間以内にSTへの紹介を手配してください:

食事中・食後の症状

体重・栄養の変化

全身状態の変化

行動・認知の変化


紹介の流れ

急性期病院・回復期病院の場合

  1. 担当医師に嚥下障害のサインを報告
  2. 医師がSTへの「嚥下評価依頼(指示)」を出す
  3. STがベッドサイド嚥下評価(BSE)を実施
  4. 必要に応じて嚥下造影(VF)または嚥下内視鏡(FEES)を実施
  5. STが食形態・水分形態・訓練方針を決定
  6. STが多職種チームに評価結果・指示を共有

特養・老健の場合

  1. 介護士・看護師が嚥下障害のサインを観察・記録
  2. 施設看護師または施設長に報告
  3. 施設嘱託医またはリハビリ担当者がSTに連絡
  4. 施設内STまたは外部ST(訪問)が評価を実施

在宅介護の場合

  1. 家族・ヘルパーがサインを観察
  2. ケアマネジャーに相談 → 訪問リハビリ(ST)を手配
  3. または、かかりつけ医に相談 → ST紹介状を発行
  4. 訪問言語聴覚士が自宅でBSEを実施

IDDSIと食形態の緊急調整

ST紹介待ちの間でも、以下の緊急の食形態調整は介護・看護スタッフが判断できます:

詳細はIDDSIフレームワークを参照してください。

重要:食形態の変更は必ずSTによる正式評価に基づいて決定します。緊急時の暫定的な変更は「安全側」に向けた措置です。


家族介護者が気をつけること

在宅での家族介護者は、次のような変化に早く気づくことができます:

変化に気づいたらまずかかりつけ医かケアマネジャーに相談してください。「様子を見よう」ではなく、早期相談が結果的に入院・肺炎を防ぎます。

安全な食事介助の実践ガイドも合わせてお読みください。


参考文献・引用

  1. ASHA(米国言語聴覚士協会). Adult Dysphagia. https://www.asha.org/practice-portal/clinical-topics/adult-dysphagia/
  2. IDDSI(国際嚥下調整食分類). The IDDSI Framework. https://www.iddsi.org/framework
  3. Logemann JA, et al. (1998). PubMed PMID: 26315994
  4. 日本嚥下医学会. https://www.jsdr.or.jp/
  5. 日本嚥下調整食学会. 嚥下調整食学会分類2021. 2021.

本記事は医療・介護専門職および家族介護者への情報提供を目的としています。個々の治療方針は担当医・言語聴覚士にご相談ください。