訪問栄養食事指導 算定要件 2024 — 居宅療養管理指導(管理栄養士)の完全ガイド

在宅で生活する嚥下障害・低栄養リスクを抱える高齢者に対し、管理栄養士が自宅を訪問して行う**訪問栄養食事指導(居宅療養管理指導費)**は、2024年度改定で算定要件・点数が改訂されました。本稿では算定の仕組みから実務フロー・嚥下調整食対応まで体系的に解説します。


1. 訪問栄養食事指導とは

訪問栄養食事指導は、介護保険の居宅サービスのひとつである「居宅療養管理指導」の一形態として管理栄養士が提供するサービスです。通院が困難な在宅利用者に対し、管理栄養士が訪問し、食事に関する具体的な指導・相談を行います。

主な対象者

低栄養は高齢者の機能低下・入院リスクを有意に高めることが複数の前向きコホート研究で示されており、在宅における定期的な栄養評価と指導は予防的介入として重要です。[1][2]


2. 2024年度改定の主なポイント

厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の概要」では、管理栄養士による居宅療養管理指導について以下の見直しが行われました。[3]

2-1. 算定単位数の改定

区分改定前(2021年度)改定後(2024年度)
同一建物居住者以外(1人訪問)544単位570単位
同一建物居住者以外(複数人訪問)540単位
同一建物居住者(月2回以上)496単位510単位
同一建物居住者(月1回)444単位460単位

月あたりの算定回数は、原則として月2回までです(特定の条件下で月4回まで算定可能な特例あり)。

2-2. ICTを活用した指導の拡充

2024年改定では、ビデオ通話等の ICT を活用した情報通信機器による指導(いわゆるオンライン訪問)の要件・算定方法が整理されました。ただし嚥下調整食の実際の食事観察が必要な場合は対面訪問を優先することが推奨されます。

2-3. 多職種連携強化

ケアマネジャー・主治医・ST(言語聴覚士)・歯科衛生士との連携記録の整備がより重視され、サービス担当者会議への参加・報告が求められる場面が増えています。


3. 算定要件の詳細

3-1. 主治医の指示書

管理栄養士が訪問栄養食事指導を算定するには、主治医(かかりつけ医)の指示書が必要です。

3-2. 対象となる「特別食」の定義

居宅療養管理指導(管理栄養士)の対象となる「特別食」は、厚生労働省告示で規定されており、主なものは以下の通りです:

嚥下調整食については、嚥下機能が低下し、日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021コード3以下の食事提供が必要な状態であることが算定の根拠となります。[4]

3-3. 算定回数・期間


4. 訪問時の実務フロー

Step 1:ケアプランへの位置づけ

ケアマネジャーから管理栄養士へ依頼が入り、居宅療養管理指導費としてケアプランに位置づけられます。主治医への指示書依頼はケアマネジャーまたは管理栄養士が調整します。

Step 2:初回訪問前のアセスメント

Step 3:初回訪問

栄養・嚥下アセスメント

  1. 身体計測(身長・体重・AC・CC等)
  2. 食事摂取状況の聴取(24時間思い出し法または食事記録)
  3. 嚥下機能スクリーニング(RSST、MWST等の実施または確認)
  4. 現在の食形態・調理状況の確認
  5. 生活状況・ADL・介護力の評価

嚥下調整食が必要な場合の追加確認

Step 4:栄養ケア計画の立案

アセスメント結果を踏まえ、個別の栄養ケア計画を作成します:

Step 5:継続訪問・モニタリング

訪問ごとに以下を確認・記録します:


5. 嚥下調整食の指導実践

5-1. 食形態の説明と調理指導

訪問栄養食事指導では、利用者・家族に対して食形態の具体的な説明と調理方法の指導を行います。

学会分類2021の食形態(コード0〜4)を家族が理解・実践できるよう、視覚的な説明資材の活用が有効です。IDDSI フレームワークに基づく食形態テストの簡易版(フォーク圧テスト等)を家族に実演することで、自宅調理の適切な品質管理につながります。[4][5]

5-2. 増粘剤の指導

飲料への増粘剤(とろみ剤)の使用は、嚥下機能が低下した高齢者の誤嚥リスクを低減するための代表的な介入です。訪問時に指導すべきポイントは以下の通りです:

臨床的助言に基づけば、増粘剤の使用は標準化されたプロトコルに沿って実施されるべきであり、不適切な粘度設定は脱水リスクを高める可能性があります。[1]

5-3. 経腸栄養からの経口移行支援

経管栄養(胃瘻・経鼻経管)から経口摂取への移行を目指す場合、管理栄養士は ST・医師と連携した段階的な経口摂取導入計画の策定に参画します:

  1. 嚥下機能評価(VE/VFの結果確認)
  2. 安全な食形態・液体粘度の設定
  3. 経口摂取量の段階的増加計画
  4. 経管栄養量の漸減スケジュール
  5. 栄養状態・体重のモニタリング

6. 書類整備と記録の実務

必要書類一覧

書類作成者保管期間
主治医の指示書医師(管理栄養士が受領)5年
栄養アセスメント記録管理栄養士5年
栄養ケア計画書管理栄養士5年
訪問記録(サービス提供記録)管理栄養士5年
ケアマネジャーへの報告書(月次)管理栄養士5年

報告・連携のポイント


7. 算定上のよくある課題と対策

課題 1:指示書の失効

主治医の指示書の有効期間管理を失念し、失効した状態でサービスを提供するケースがあります。6か月ごとの更新を管理栄養士側でリマインド管理することが推奨されます。

課題 2:特別食の該当確認

嚥下調整食として算定する場合、嚥下機能低下の診断根拠(スクリーニング結果・医師の診断)を記録に残すことが必要です。「高齢だから」という理由のみでは算定根拠として不十分になる可能性があります。

課題 3:同一建物の判定

有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に居住する利用者への訪問は「同一建物居住者」扱いとなり、単位数が異なります。建物・住所の確認を事前に行ってください。


関連ページ


参考資料

  1. Correia MITD, et al. Nutrition screening in hospitalized patients. Clin Nutr. 2003;22(5):415-421. PMID: 14556923.
  2. Guigoz Y. The Mini Nutritional Assessment (MNA) Review of the Literature — What does it tell us? J Nutr Health Aging. 2006;10(6):466-485. PMID: 17183419.
  3. 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の概要」老人保健課, 2024年1月.
  4. 日本摂食嚥下リハビリテーション学会「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021」日摂食嚥下リハ会誌 25(2):135-149, 2021.
  5. Cichero JAY, et al. Development of International Terminology and Definitions for Texture-Modified Foods and Thickened Fluids Used in Dysphagia Management: The IDDSI Framework. Dysphagia. 2017;32(2):293-314. PMID: 27913916.

最終更新:2026年5月25日