IDDSIフローテストとは
IDDSIフローテスト(IDDSI Flow Test)は、液体とろみ食品(IDDSIレベル0〜4)の粘度・分類を確認するための標準化された品質管理テストです。10mLのルアーロック注射器(シリンジ)を使い、10秒間で流れ出る量(残量)によって液体のIDDSIレベルを判定します。
世界的に統一された方法論であり、施設・病院・製品メーカー・研究者が同一の基準でとろみ液体を評価できます(www.iddsi.org/framework)。日本でも特養・老健・急性期病院でのとろみ水品質管理に導入が進んでいます。
必要な器材
| 器材 | 仕様 |
|---|---|
| ルアーロック注射器 | 10mL・先端ルアーロック型(ルアースリップ型は不可) |
| タイマー | 10秒計測できるもの(スマートフォン可) |
| 液体サンプル | テスト対象のとろみ水(調製直後が原則) |
| 記録用紙 | 残量・日時・調製者を記録 |
注意:10mLルアーロック注射器(内径約15.9mm・ノズル径1.4mm)が指定されています。サイズが異なると結果が変わります。
フローテストの手順
ステップ1:サンプルの準備
- とろみ剤を指定量で混合し、製品指示の待機時間(通常30〜60秒)が経過したサンプルを使用
- サンプルは室温(20〜25℃)で評価(熱いと粘度が低くなる)
- 気泡が入らないよう静かに吸い上げる
ステップ2:注射器の準備
- ノズルのキャップを閉じたまま、サンプルを10mLまで吸い上げる
- 注射器を垂直に立てる(ノズルが下向き)
- 気泡があれば軽くタップして取り除く
ステップ3:計測
- タイマーを準備する
- ノズルのキャップを外すと同時にタイマースタート
- 10秒間 そのまま保持する(注射器を動かさない)
- 10秒後にノズルをふさぐ
ステップ4:残量の読み取り
注射器の目盛りを読み、残量(mL)を記録します。
判定基準(IDDSIレベル)
| 残量(10秒後) | IDDSIレベル | 名称 |
|---|---|---|
| 残量なし(0〜1mL) | レベル0 | 薄い液体(水と同等) |
| 残量1〜4mL | レベル1 | やや薄い液体 |
| 残量4〜8mL | レベル2 | 薄いとろみ(Mildly Thick) |
| 残量8〜22mL | レベル3 | 中間のとろみ(Moderately Thick) |
| 残量22mL以上(動かない) | レベル4 | 濃いとろみ(Extremely Thick) |
レベル4の判定:液体が動かない、またはゆっくりとしか動かない場合はレベル4以上。スプーンテストや叉テストへ移行します。
よくある誤差とその対策
誤差1:注射器のサイズが違う
原因:2.5mL・5mL・20mLなどの別サイズを使用
対策:10mLルアーロック型のみを使用する。施設内で使用注射器を統一し、色分けシールで管理する
誤差2:液体の温度
原因:熱いとろみ水はテストすると粘度が低く(薄く)出る
対策:必ず20〜25℃(室温)でテストする。熱い飲み物は使用前に冷ます
誤差3:調製後の経過時間
原因:キサンタンガム系とろみ剤は完全に水和するまで数分かかる
対策:製品指示の待機時間後にテストする(通常30秒〜2分)
誤差4:気泡の混入
原因:勢いよく撹拌すると気泡が入り流れに影響する
対策:穏やかに撹拌し、テスト前に泡を取り除く
誤差5:測定者間のバラツキ
原因:注射器のノズル開放と同時にタイマーを開始できていない
対策:2人で実施(1人がノズル操作・1人がタイマー)するか、デジタルタイマーを使う
日常品質管理への組み込み
特養・老健での推奨頻度
| 場面 | 推奨頻度 |
|---|---|
| 新しいとろみ剤を導入したとき | 導入前・導入後の比較テスト |
| 異なるロットの製品に変更したとき | 都度テスト |
| 日常品質管理 | 週1回以上 |
| 新スタッフが調製を担当するとき | 初回指導時に必ず実施 |
記録の管理
フローテストの結果は日付・実施者・使用製品・添加量・残量(mL)・判定レベルを記録します。管理栄養士またはSTが定期的に記録を確認します。
スプーンテスト(レベル4以上の確認)
フローテストでレベル4(残量22mL以上)と判定された場合、スプーンテストでさらに詳細に確認します:
- スプーンにサンプルをすくう
- スプーンを傾けたときの流れ方を観察
目安:ゆっくり落ちるならレベル4;スプーンの形を保つならレベル5〜6。
STへの紹介タイミングと安全な食事介助ガイドも参照してください。
参考文献・引用
- ASHA(米国言語聴覚士協会). Adult Dysphagia. https://www.asha.org/practice-portal/clinical-topics/adult-dysphagia/
- IDDSI(国際嚥下調整食分類). The IDDSI Framework. https://www.iddsi.org/framework
- Logemann JA, et al. (1998). PubMed PMID: 26315994
- 日本嚥下医学会. https://www.jsdr.or.jp/
- 日本嚥下調整食学会. 嚥下調整食学会分類2021. 2021.
本記事は医療・介護専門職および家族介護者への情報提供を目的としています。とろみレベルの設定は担当言語聴覚士の指示に従ってください。