2つの分類体系:なぜ両方を知る必要があるか

日本の嚥下障害管理現場では、2つの分類体系が並行して使用されています:

  1. 日本嚥下調整食学会分類2021(JDS-C 2021):日本独自の標準として2021年に改訂された分類体系
  2. IDDSI(国際嚥下調整食分類):2017年に国際標準として発表された分類体系(www.iddsi.org/framework)

急性期病院・回復期病院・特養・老健・在宅など複数の設定をまたがる患者管理では、両分類体系を理解し適切に換算できることが安全な食形態引き継ぎに不可欠です(日本嚥下医学会、www.jsdr.or.jp)。


対照表:固形食

JDS-C 2021コード食形態名称IDDSI レベルIDDSI 名称主な特徴
コード0嚥下訓練食0jレベル3Moderately Thickゼリー状・ジュレ
コード1j嚥下調整食1jレベル3〜4Moderately/Extremely Thick均一なゼラチン状
コード2-1嚥下調整食2-1レベル4Pureedなめらかなペースト
コード2-2嚥下調整食2-2レベル4Pureedまとまりのあるペースト
コード3嚥下調整食3レベル5Minced & Moist4mm以下のミンチ状
コード4嚥下調整食4レベル6Soft & Bite-Sized15mm以下の軟菜
普通食レベル7Regular一般的な食事

対照表:液体(とろみ)

JDS-C 2021粘度(mPa·s、20℃)IDDSI レベルフローテスト残量(10秒後)
とろみなし<50レベル0残量なし
とろみ(薄)50〜150レベル2残量8〜22mL
とろみ(中)150〜300レベル3残量4〜8mL
とろみ(濃)300〜500レベル3〜4残量1〜4mL

重要な注意点:粘度測定の温度・条件の違い(JDS-C 2021は20℃、IDDSIは25℃)により、数値の直接比較には誤差が生じます。対照表はあくまで目安であり、フローテストによる実測値での確認が推奨されます。


主な相違点と注意点

1. 分類の目的と構造

JDS-C 2021

IDDSI

2. コード3は「固形食」か「液体」か

JDS-C 2021コード3は「固形食の最も低いレベル(ミンチ状)」ですが、IDDSIのレベル3は「液体(中間のとろみ)」です。番号が同じでも全く別のカテゴリーなので注意が必要です。

3. コード0〜2(最重度嚥下障害食)

JDS-C 2021IDDSI
コード0(嚥下訓練食)レベル3に最も近い(特殊なゼリー)
コード1jレベル3〜4の中間に位置する
コード2-1レベル4

コード0・1jはJDS-C 2021に固有の区分であり、IDDSIとの1対1対応はないため、転院・引き継ぎ時には詳細な食品特性の記載が必要です。


施設での実装:デュアル表記の推奨

日本の多くの施設では、食事指示書・メニュー表にJDS-C 2021コードとIDDSIレベルの両方を表記するデュアル表記(二重表記)を採用しています。例:

嚥下調整食 JDS-C 2021 コード3 / IDDSI レベル5(ミンチ状)
とろみ水 JDS-C 2021 薄 / IDDSI レベル2(薄いとろみ)

この表記により、国内施設間でも国際的な引き継ぎでも同じ食形態が提供されます。


転院・転居時の引き継ぎ

急性期病院から回復期・特養・在宅への退院時、食形態の引き継ぎに以下の情報を記録します:

  1. JDS-C 2021コードとIDDSIレベルの両方を記載
  2. とろみ剤の種類・ブランド・添加量(フローテスト残量を含む)
  3. 食事介助の姿勢・方法
  4. 経口摂取の禁忌事項(避けるべき食品)
  5. 次回のST評価の推奨時期

STへの紹介タイミング安全な食事介助の実践ガイドも参照してください。


参考文献・引用

  1. ASHA(米国言語聴覚士協会). Adult Dysphagia. https://www.asha.org/practice-portal/clinical-topics/adult-dysphagia/
  2. IDDSI(国際嚥下調整食分類). The IDDSI Framework. https://www.iddsi.org/framework
  3. Logemann JA, et al. (1998). PubMed PMID: 26315994
  4. 日本嚥下医学会. https://www.jsdr.or.jp/
  5. 日本嚥下調整食学会. 嚥下調整食学会分類2021. 2021.

本記事は医療・介護専門職および家族介護者への情報提供を目的としています。食形態の設定は担当言語聴覚士の指示に従ってください。