IDDSI(国際嚥下食分類)完全ガイド — レベル0からレベル7
**IDDSI(International Dysphagia Diet Standardisation Initiative)**は、嚥下障害のある方の食事と飲み物を標準化するために2013年に設立された国際的な取り組みで、2017年にフレームワーク最終版が公開されました。現在、日本・香港・オーストラリア・カナダ・英国など世界各国の医療機関・介護施設で採用が進んでいます。
なぜ IDDSI が必要か
IDDSIが登場する以前、各国・各施設は独自の食形態分類を使用していました。日本では嚥下食ピラミッド(2004年提唱)やユニバーサルデザインフード(UDF)区分が普及していましたが、名称や基準が施設ごとに異なるため、患者が転院・転所した際に「前の施設では何を食べていたか」が正確に伝わらない問題がありました。
IDDSI は世界共通の言語として、この課題を解決します。
IDDSI フレームワーク:8段階の分類
IDDSIは食品(Solid side)と飲み物(Drink side)を分けて分類します。
飲み物(Drinks)— レベル0〜4
| レベル | 名称 | 特徴 |
|---|---|---|
| 0 | 薄い液体(Thin) | 水・お茶・牛乳など通常の飲み物。注射器テストで10秒以内に全量流出 |
| 1 | 少しとろみのある液体(Slightly Thick) | わずかにとろみがあり、コップで飲める。10mL注射器で1〜4mL残存 |
| 2 | うすいとろみのある液体(Mildly Thick) | スプーンで飲める。注射器で4〜8mL残存。ネクター状 |
| 3 | 中程度とろみのある液体(Moderately Thick) | 注射器では流れにくい。スプーンですくうと垂れ落ちる。ハニー状 |
| 4 | 非常にとろみのある液体(Extremely Thick) | スプーンにくっつく。コップでは飲めない |
食品(Foods)— レベル3〜7
| レベル | 名称 | 特徴 |
|---|---|---|
| 3 | 流動食(Liquidised) | なめらかなピューレ。注射器を通過する。形を保たない |
| 4 | ピューレ食(Puréed) | 滑らかで均一。スプーンで山を作れる。フォーク圧迫で広がる |
| 5 | ミンチ状・しっとり食(Minced & Moist) | 4mm以下の粒。フォーク圧迫で変形する。まとまりを保つ |
| 6 | やわらか食(Soft & Bite-Sized) | 1.5cm角以下。舌と口蓋で潰せる。フォーク側面で切れる |
| 7 | 普通食(Regular) | 制限なし(ただし嚥下障害のある方は誤嚥リスクに注意) |
判定テストの実施方法
フォーク圧迫テスト(Fork Drip Test / Fork Pressure Test)
目的:レベル3〜6の食品判定
手順(レベル4の確認):
- 食品をスプーンに山盛りにのせ、フォークの背面で軽く押す
- 押した指が白くなるほどの力を加えない(舌の力と同程度が目安)
- 食品が滑らかに広がり、フォークの間を通り抜けたらレベル4に適合
- 水分が分離しないこと・均一なテクスチャーであることも確認
レベル6の確認(フォーク側面カットテスト):
- フォークの側面(縁)を食品に当てて押す
- 力を入れずにカットできればレベル6に適合
- 切断後、食品がくずれず形を保つことも確認
スプーンチルト(傾斜)テスト
目的:レベル4の流動性確認
手順:
- スプーンに食品をすくい、スプーンを傾ける
- 食品がゆっくり・塊として落ちればレベル4に適合
- 水のように流れ落ちる場合はレベル3以下の可能性あり
注射器流速テスト(Syringe Flow Test)
目的:飲み物のレベル判定
必要なもの:10mLカテーテルチップ注射器(口径8.7mm)
手順:
- 10mLの飲み物を注射器に吸い上げる
- 10秒間、自然に流出させる(指でピストンを押さない)
- 残った量を確認してレベルを判定
| 残量 | 判定レベル |
|---|---|
| 0mL(全量流出) | レベル0(薄い液体) |
| 1〜4mL | レベル1 |
| 4〜8mL | レベル2 |
| 8mL以上またはほぼ流れない | レベル3以上 |
旧嚥下食ピラミッドとの対照表
日本の嚥下食ピラミッド(2004年、金谷節子ら提唱)とIDDSIの対応関係は以下の通りです(目安であり、テクスチャー測定による検証が必要です)。
| 嚥下食ピラミッド | IDDSI相当 |
|---|---|
| L0:開始食(ゼリー) | レベル3〜4 |
| L1:嚥下調整食1(均質なゼリー) | レベル4 |
| L2:嚥下調整食2(ソフト食) | レベル5 |
| L3:嚥下調整食3(やわらか食) | レベル6 |
| L4:嚥下移行食 | レベル6〜7 |
| 普通食 | レベル7 |
ユニバーサルデザインフード(UDF)との対応
UDF(日本介護食品協議会)はとろみ・かたさの目安を4区分で規定しています。
| UDF区分 | IDDSI相当 |
|---|---|
| 区分1:容易にかめる | レベル6〜7 |
| 区分2:歯ぐきでつぶせる | レベル5〜6 |
| 区分3:舌でつぶせる | レベル4〜5 |
| 区分4:かまなくてよい | レベル3〜4 |
| とろみ調整:とろみあり | レベル1〜3 |
スマイルケア食との対応
農林水産省が推進するスマイルケア食は介護食品を「噛む力」「飲み込む力」の目安でカテゴリ分類しています。
| スマイルケア食 | IDDSI相当目安 |
|---|---|
| 青マーク(飲み込みが気になる方向け) | レベル0〜3(飲み物) |
| 黄マーク(かむことが難しい方向け) | レベル4〜5 |
| 赤マーク(かまなくていい方向け) | レベル3〜4 |
日本摂食嚥下リハビリテーション学会(JSSD)嚥下調整食学会分類2021との整合
学会分類2021はJSSDが2021年に改訂した日本の標準的な嚥下調整食分類です。コード0〜4の食品、およびとろみのコード0〜3を規定しており、IDDSIとの対応表も学会が公式に提示しています。
現在、日本の医療・介護現場では学会分類2021とIDDSIを併記する運用が推奨されており、患者の転院・転所時の情報共有の精度が高まっています。
IDDSI を施設・家庭で活用するために
- 判定テストの実施:フォーク圧迫テスト・スプーンチルトテストは特別な機器不要で実施できます
- 食事記録への明記:「やわらかい食事」ではなく「IDDSI レベル5」と記録することで情報が正確に伝わります
- 市販食品の確認:パッケージにUDF・スマイルケア食の表示がある場合、IDDSI対照表で適合レベルを確認します
- スタッフ研修:IDDSI公式ウェブサイト(iddsi.org)には日本語の研修資料・動画が無料公開されています
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最終更新:2026年5月13日