IDDSIレベル2「薄いとろみ(Mildly Thick)」とは
国際嚥下調整食分類(IDDSI:International Dysphagia Diet Standardisation Initiative)のレベル2「薄いとろみ(Mildly Thick)」は、通常の液体(水・お茶)より少しとろみをつけた飲み物のカテゴリーです。
IDDSIは2017年に国際標準として発表された液体・食品の粘度・テクスチャーの分類体系であり、日本の嚥下調整食学会分類2021(JDS-C 2021)とも対照表が整備されています(www.iddsi.org/framework)。
レベル2は「スポーツ飲料よりわずかに粘度が高い」程度の液体であり、嚥下機能が低下しているが水(レベル0)では誤嚥リスクがある患者に適用されます。
レベル2の粘度基準
IDDSIのレベル2の粘度基準は以下のとおりです:
- フローテスト(IDDSI flow test):10秒後に注射器内に残量8〜22mL
- 粘度の目安:1〜50 mPa·s(25℃)
- 視覚的特徴:スプーンで少し流れる;勢いよく流れるが水よりはゆっくり
フローテスト実施方法
IDDSIフローテストはとろみ液体の標準化された品質管理テストです。
必要な物品
- 10mLルアーロック注射器(IDDSI指定サイズ)
- タイマー
- 液体サンプル(調製から10分以内のもの)
手順
- 注射器に液体を10mLまで吸い上げる
- 注射器を垂直に保持する
- ストッパーを外し、タイマーを同時にスタート
- 10秒後にストッパーを閉めて残量を読む
レベル2の判定
- 残量8〜22mL → レベル2(薄いとろみ)合格
- 残量22mL以上 → レベル3(中間のとろみ)またはそれ以上
- 残量8mL未満 → レベル1またはレベル0(水に近い)
適応基準:どのような患者に処方されるか
レベル2は以下のような患者にSTが処方することが多いです(ASHA, 2023):
- 液体での嚥下反射がわずかに遅い
- 軽度の咽頭残留がある
- 水(レベル0)での侵入(penetration)は見られるが誤嚥はない
- レベル3から段階的に改善してきた患者
注意:とろみのレベルはSTの処方に基づいて決定します。自己判断での変更は誤嚥リスクを高める可能性があります。
JDS-C 2021との対照
日本の施設・在宅で使用されることが多いJDS-C 2021(嚥下調整食学会分類2021)との対照:
| IDDSI | JDS-C 2021 | 粘度の目安 |
|---|---|---|
| レベル1(シリンジ使用不可の液体) | — | ネクターを超える |
| レベル2(薄いとろみ) | とろみ(薄) | 1〜50 mPa·s |
| レベル3(中間のとろみ) | とろみ(中) | 51〜350 mPa·s |
| レベル4(濃いとろみ) | とろみ(濃) | 1750+ mPa·s |
JDS-C 2021の「薄いとろみ」の目安粘度は50〜150 mPa·s(20℃)と定義されており、IDDSIレベル2と概ね対応します。ただし、測定温度・条件が異なるため完全な1対1対応ではありません。
とろみ剤による調製方法
とろみ剤の種類
日本市場で流通するとろみ剤の主成分:
| 成分 | 特徴 |
|---|---|
| キサンタンガム系 | 温度変化に安定・だ液で溶けにくい(推奨) |
| グアーガム系 | 低コスト・だ液で薄くなりやすい |
| でんぷん系 | 時間経過で粘度が変化しやすい |
キサンタンガム系が最も安定性が高く、STから推奨されることが多いです。
調製の目安
レベル2(薄いとろみ)調製目安(各製品の添付文書に従うこと):
- 例:水200mLに対しXXgのとろみ剤(製品による)
- 撹拌(かくはん)後、製品指示の時間(通常30〜60秒)待ってから提供
- 調製後はすぐに提供(時間が経つと粘度が変化する)
一般的な注意点
- カレー・みそ汁など高温の液体にはフローテスト前に必ず冷ます
- 酸性飲料(ジュース)や炭酸飲料はとろみがつきにくい場合がある
- 牛乳・乳製品は粘度が変化しやすいため別途確認
施設・在宅での品質管理
特養・老健では、とろみ水の粘度管理が安全性に直結します。推奨される品質管理:
- 調製マニュアルの整備(製品名・使用量・手順を明記)
- 週1回程度のフローテストによる確認
- 新人スタッフへの調製訓練
- 管理栄養士・STによる定期的な確認
STへの紹介タイミングおよび安全な食事介助ガイドも参照してください。
参考文献・引用
- ASHA(米国言語聴覚士協会). Adult Dysphagia. https://www.asha.org/practice-portal/clinical-topics/adult-dysphagia/
- IDDSI(国際嚥下調整食分類). The IDDSI Framework. https://www.iddsi.org/framework
- Logemann JA, et al. (1998). PubMed PMID: 26315994
- 日本嚥下医学会. https://www.jsdr.or.jp/
- 日本嚥下調整食学会. 嚥下調整食学会分類2021. 2021.
本記事は医療・介護専門職および家族介護者への情報提供を目的としています。とろみレベルは担当言語聴覚士の指示に従ってください。