IDDSIレベル3「中間のとろみ(Moderately Thick)」とは
IDDSI(国際嚥下調整食分類)レベル3「中間のとろみ(Moderately Thick)」は、レベル2より粘度が高く、スプーンですくえるが独立した形を保てない液体です。日本では「中間のとろみ水」「みつの字とろみ」などと呼ばれることもあります。
レベル3は、液体誤嚥リスクが中程度にある患者——特に咽頭期に遅延がある方や喉頭感覚が低下している方——に多く処方されます(ASHA, 2023;www.iddsi.org/framework)。
レベル3の粘度基準
IDDSIレベル3の規格:
- フローテスト:10秒後の注射器内残量 4〜8mL
- 粘度の目安:51〜350 mPa·s(25℃)
- 視覚的特徴:ゆっくり流れる;スプーンで形を作れるが崩れる;カップを傾けると流れるが少し残る
フローテスト実施方法(レベル3確認)
IDDSIフローテストを使ってレベル3を確認します:
- 10mLルアーロック注射器にサンプルを吸い上げる
- 注射器を垂直に保持して10秒間流す
- 残量を読む
判定:
- 残量4〜8mL → レベル3(中間のとろみ)合格
- 残量8mL以上 → レベル2(薄いとろみ)
- 残量4mL未満 → レベル4(濃いとろみ)またはそれ以上
JDS-C 2021との対照
| IDDSI | JDS-C 2021 | フローテスト残量 |
|---|---|---|
| レベル2(薄いとろみ) | とろみ(薄)相当 | 8〜22mL |
| レベル3(中間のとろみ) | とろみ(中)相当 | 4〜8mL |
| レベル4(ピューレ・濃いとろみ) | とろみ(濃)相当 | 1〜4mL |
詳細はIDDSIフレームワークを参照してください。
適応患者
レベル3が適応される主な状況:
- 咽頭期の嚥下反射遅延:液体が咽頭を通過するスピードが速すぎて誤嚥する患者
- 喉頭感覚低下:誤嚥してもむせない(サイレント誤嚥)傾向がある患者
- 脳卒中後急性期:嚥下反射が戻りかけている回復初期
- パーキンソン病・多系統萎縮症:咽頭収縮力が低下している患者
重要:レベル3の処方はSTが嚥下評価(VF・FEES等)に基づいて決定します。自己判断での変更は禁物です。
調製の実践
とろみ剤の選択
キサンタンガム系とろみ剤が温度・だ液に対して最も安定しており、多くのSTが推奨します。製品ごとに推奨量が異なるため、製品添付文書に従います。
一般的な水200mLでの調製目安(製品による)
| 製品タイプ | レベル3目安添加量(目安) |
|---|---|
| キサンタンガム系 | 約1.5〜2.5g(各製品の添付文書参照) |
| でんぷん系 | 約3〜5g(温度変化で粘度変化あり) |
注意:添加量は製品・温度・対象液体により大きく異なります。必ず製品説明書を確認し、フローテストで確認してください。
よくある調製のミス
- 撹拌不足:だまになると局所的に粘度が変わり誤嚥リスクが増す
- 時間が経ちすぎた液体を使用:粘度が変化している
- 熱い飲み物に直接添加:粘度の変化が予測しにくい(冷ましてから添加)
- 酸性飲料(オレンジジュース等):とろみがつきにくい場合がある
施設・在宅での管理ポイント
特養・老健での品質管理
- とろみ水の調製マニュアルを整備し、全スタッフが同じ方法で調製できるようにする
- フローテストで定期的にレベルを確認(週1回以上を推奨)
- 担当STが定期的に施設訪問して品質確認を行う
在宅介護での工夫
- 使い切りタイプのとろみ水パック(工場調製済み)を利用することで品質を安定させる
- 家族が調製する場合は、STまたは管理栄養士による調製指導を受ける
- 複数の家族が調製する場合は、同一の計量スプーンを使う
レベル2とレベル3の使い分け
| 状況 | 推奨レベル |
|---|---|
| 軽度の嚥下遅延 | レベル2 |
| 中等度の嚥下遅延 | レベル3 |
| 重度の嚥下遅延・サイレント誤嚥 | レベル3〜4、またはNPO検討 |
STへの紹介タイミングと安全な食事介助ガイドも参照してください。
参考文献・引用
- ASHA(米国言語聴覚士協会). Adult Dysphagia. https://www.asha.org/practice-portal/clinical-topics/adult-dysphagia/
- IDDSI(国際嚥下調整食分類). The IDDSI Framework. https://www.iddsi.org/framework
- Logemann JA, et al. (1998). PubMed PMID: 26315994
- 日本嚥下医学会. https://www.jsdr.or.jp/
- 日本嚥下調整食学会. 嚥下調整食学会分類2021. 2021.
本記事は医療・介護専門職および家族介護者への情報提供を目的としています。とろみレベルは担当言語聴覚士の指示に従ってください。