IDDSI レベル4(ピューレ食)— 調理ポイントと市販品
IDDSI レベル4は、**ピューレ食(Puréed)**と呼ばれる食形態です。スプーンで山を作れる程度のとろみと滑らかさを持ち、口の中で容易に変形するため、歯が十分になく、咀嚼力が低下している方や、食塊を形成・操作する口腔機能が低下している方に適しています。
レベル4の定義
IDDSIフレームワークによる定義:
- 均一で滑らかなテクスチャー(粒・塊・繊維なし)
- スプーンで山を作れる(流れ落ちない)
- 傾けたスプーンからゆっくり塊として落ちる
- フォーク圧迫テストで広がる(流れ落ちることはない)
- 噛む必要なし
- 舌と口蓋だけで変形・送り込みができる
日本摂食嚥下リハビリテーション学会(JSSD)学会分類2021との対応:
- コード2-1(なめらかな均質なペースト)がレベル4に相当
判定テストの実施
フォーク圧迫テスト(Fork Pressure Test)
- 食品をスプーンに山型に盛る
- フォークの背面を食品の上に乗せ、指が白くなる程度の力(舌の力に相当)で押す
- 食品が滑らかに広がり、フォーク格子間を通ればレベル4に適合
- 水分が分離していないか確認(分離している場合は基準外)
スプーンチルトテスト
- スプーンに食品をすくう
- スプーンを90度傾ける(垂直にする)
- 食品が塊としてゆっくり落ちる:レベル4適合
- 水のように流れる場合:レベル3以下の可能性
レベル4に適した食品・適さない食品
適している食品
| カテゴリ | 具体例 |
|---|---|
| 卵料理 | 茶碗蒸し(粒なし)・卵豆腐・プリン |
| 豆腐 | 絹ごし豆腐のピューレ・豆腐プリン |
| 野菜 | かぼちゃピューレ・さつまいもピューレ・にんじんピューレ |
| 魚 | 白身魚のムース・蒸し魚を裏ごしたもの |
| 肉 | 鶏ひき肉を豆腐・卵と合わせて蒸したもの |
| 果物 | バナナピューレ・桃ピューレ(皮なし) |
| 主食 | 滑らかな全粥ペースト・パン粥(粒なし) |
| デザート | 市販のプリン・ムース・ゼリー(ゲルが弱いもの) |
適さない食品(レベル4には調整が必要)
- 粒が残る食品:コーン・豆類・刻んだ野菜(ブレンド・裏ごしが必要)
- 繊維質の食品:ごぼう・れんこん・きのこ(繊維除去または使用不可)
- 水分と固形物が混在する食品:味噌汁の具入り(具を除くかブレンド)
- 口の中でバラけるもの:パン(乾燥)・クッキー・ふりかけ
代表的な和食レシピ:茶碗蒸しと卵豆腐
茶碗蒸し——レベル4〜5の判定と調整
茶碗蒸しは嚥下食として優れた食品のひとつです。ただし、卵とだし汁の比率によって硬さが変わり、レベルが変動します。
レベル4向けの比率:
- 全卵1個:だし汁 150〜180mL(約1:2.5〜3)
- 薄口醤油・みりんで薄く味付け
- 蒸し時間:弱火で10〜12分(火が通りすぎると硬くなるため注意)
レベル4確認:
- スプーンで山を作り、フォーク圧迫テストを実施
- 均一なゲル状になっているか確認(気泡・巣立ちが多い場合はこす工程を追加)
具材の扱い: レベル4では、えび・鶏肉・ぎんなんなどの具材はピューレ化するか除外します。具材ありの茶碗蒸しはレベル5〜6になります。
卵豆腐のレベル判定
市販の卵豆腐は多くがIDDSI レベル4〜5に相当しますが、製品によって硬さが異なります。購入後は必ずフォーク圧迫テストを行って確認してください。
市販品でのテスト方法:
- 卵豆腐を皿に盛る
- フォーク背面で軽く押す
- 滑らかに広がればレベル4、多少形が残ればレベル5
市販のレベル4適合品
明治やわらか食シリーズ
明治(meiji)が販売する介護食シリーズで、IDDSI レベル4に対応した複数のメニューがあります。
- 「おかゆ(やわらか)」「かぼちゃのポタージュ」「白身魚のポタージュ」など
- 常温保存可能(レトルトパウチ)で介護施設・在宅どちらにも使いやすい
キューピー やさしい献立シリーズ
キューピーの「やさしい献立」は長期にわたる定番介護食ブランドです。
- 「なめらかおかず」シリーズがレベル4に対応
- さけ・鶏肉・野菜など和食ベースのメニューが豊富
- 1食あたりのタンパク質・エネルギー量が明記されており栄養管理しやすい
ニュートリー やわらかシリーズ
- 「ソフリー」「プロッカZnα」など、栄養補助・嚥下調整を兼ねた製品ラインナップ
- 低栄養リスクのある方への活用に向く
活用のコツ:市販品を活用する際も、購入ロットごとにフォーク圧迫テストを実施し、実際のテクスチャーを確認することを推奨します。製造時期・保存状態によって硬さが変わることがあります。
デイサービスでの提供事例
デイサービス(通所介護)でのレベル4食の提供には、以下の工夫が有効です。
提供管理
- 食形態カードの携帯:利用者ごとに「IDDSI L4・とろみL2」などの食形態を記載したカードを使用し、担当スタッフが変わっても安全に対応
- 週次の調理確認:調理スタッフがフォーク圧迫テストを週1回以上実施し、品質を記録
見た目の工夫(食欲向上)
- 市販の介護食型成形器(例:アサヒ軽金属工業の成形容器)を使用し、元の食材の形(魚の形・にんじんの形)に成形する
- 季節の飾り(桜型のにんじんピューレなど)で季節感を演出する
在宅との連携
- デイサービスでの食形態を記録し、家族への「食事日誌」として共有
- 家族への調理指導を月1回程度実施(デイ内の家族向け勉強会)
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最終更新:2026年5月13日