IDDSI レベル5(ミンチ状・しっとり食)— 日本の介護食との対応
IDDSI レベル5は**ミンチ状・しっとり食(Minced & Moist)**と呼ばれ、嚥下食の中でも「少し形のある食品を安全に食べたい」方を対象とした段階です。レベル4(ピューレ食)から一歩進んで食形態の自由度が上がりますが、咀嚼機能の低下が著しい方には依然として適した選択肢です。
レベル5の定義
IDDSIフレームワークによる定義:
- 食品は4mm以下の小さな粒または塊からなる
- 全体的にしっとりとした質感を保つ(パサパサしていない)
- まとまりを保ち、口の中でバラバラにならない
- フォーク圧迫テストで容易に変形する
- 噛む動作は最小限でよい(または不要)
- 水分が食品から分離していない
学会分類2021との対応:
- コード2-2(粒が残るやわらかペースト)または
- コード3(舌と口蓋で容易に崩せる食品)に相当(製品によって異なる)
4mm角の判定法
**「4mm以下」**はIDDSI レベル5の最重要基準です。これは経験則ではなく、誤嚥・窒息の安全マージンを考慮した科学的根拠に基づく数値です。
測定方法
- 食品を実際に提供する状態で準備する
- スケール(定規)で食品の最大径を計測する
- 肉・野菜など固形部分が 4mm 以下であることを確認
- まとまりを確認:食品が一塊として扱えるか
実践的な判定のコツ
- 4mmの目安:小指の爪の幅程度
- フォークの格子(歯の間隔)を目安にする(一般的なフォーク格子は3〜5mm)
- 疑わしい場合はフォーク圧迫テストで変形を確認
フォーク圧迫テスト:レベル5の実施
手順
- レベル5の食品をスプーンにのせ、フォークの背面を乗せる
- 中程度の力(舌の力に相当。指が白くなる手前)で押す
- 食品が容易に変形し、形が崩れる:レベル5に適合
- 食品が変形しない・硬い場合:レベル6以上の可能性
- 食品が完全に流れ広がる場合:レベル4以下の可能性
まとまりのチェック
フォーク圧迫後、食品がある程度まとまりを保つことを確認します。バラバラになって散らかる場合は、まとめ材料(卵・片栗粉など)を追加するか、あんかけ等でコーティングします。
和食での応用:レベル5調理の実践
1. 軟飯(なんはん)
軟飯は通常の白米をより多い水分で炊いたご飯です。米:水 = 1:2.5〜3の割合で炊き、ご飯粒が残りつつも軟らかく崩れやすい状態がレベル5〜6に相当します。
テスト方法:
- 炊き上がったら1粒を指でつまみ、軽く押して崩れるか確認
- フォーク圧迫テストでも確認可能
ポイント:
- 炊きたて直後は軟らかいが、時間が経つと硬化することがある。提供前に温め直し、必要に応じてだし汁を数滴かけてしっとりさせる
2. 茶碗蒸し(粒あり)
卵とだし汁の比率を1:2程度にすると、やや硬めの茶碗蒸しになります。ひき肉・細かく刻んだ豆腐などの具材を少量加えれば自然にレベル5になります。
具材の条件:
- 4mm以下に切るか、ひき肉を使用
- 硬い具材(えびの丸まったもの・ぎんなんなど)は不向き
3. 厚焼き卵
だし入り厚焼き卵は日本の伝統的な料理で、適切に作るとIDDSI レベル5に適合します。
レベル5仕立てのポイント:
- 卵2個+だし汁 大さじ3〜4(通常より多め)
- 砂糖・薄口醤油少量
- 弱火でゆっくり焼く(内部が完全に固まり、かつしっとりを維持)
- 焼き上がりを2cm幅に切り、フォーク圧迫テストを実施
調整方法:
- 硬すぎる場合:だし汁を増やすか、やわらかおかずに仕立て直す
- バラけやすい場合:片栗粉を少量加えることでまとまりが向上
4. あんかけ料理(レベル5の最強の味方)
あんかけはレベル5調理の中核的なテクニックです。片栗粉または葛粉でとろみをつけた「あん」で食材をコーティングすることで、口腔内でのまとまりを大幅に改善します。
基本のあんかけレシピ:
- 出汁 200mL + 薄口醤油 小さじ1 + みりん 小さじ1 を煮立てる
- 水溶き片栗粉(片栗粉 大さじ1 + 水 大さじ2)を加えてとろみをつける
- 食材(ひき肉・とうふ・野菜ピューレなど)の上にかける
UDF区分3との比較
**ユニバーサルデザインフード(UDF)区分3「舌でつぶせる」**は、一般的にIDDSI レベル4〜5に相当しますが、両者の基準には違いがあります。
| 比較項目 | UDF区分3 | IDDSI レベル5 |
|---|---|---|
| 判定方法 | かたさの測定値(N/cm²) | フォーク圧迫テスト+4mm基準 |
| 粒の大きさ規定 | なし(かたさ基準のみ) | 4mm以下 |
| 水分・まとまり | 基準に含まれない | しっとりしていること・まとまりあり |
| 実施場所 | メーカー測定 | 現場で実施可能 |
UDF区分3の製品でも、粒が4mmを超えている場合や水分が分離している場合はIDDSI レベル5の基準を満たしません。 市販品を使用する際は実際にテストを行うことを推奨します。
レベル5によく起こる失敗と対処法
パサつく(水分不足)
対処:調理時に水分(だし汁・みりん)を多めにする。提供前にあんをかける。盛り付け後にスプーン1杯のだし汁をかける
バラバラになる(まとまりなし)
対処:つなぎ(卵・片栗粉・山芋)を追加する。あんかけにする
食品が硬い(レベル6以上になっている)
対処:調理時間を延ばす(圧力鍋・低温調理)。より軟化しやすい食材に変更する
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最終更新:2026年5月13日