IDDSIレベル6「ソフト&バイトサイズ(Soft & Bite-Sized)」とは
IDDSI(国際嚥下調整食分類)レベル6「ソフト&バイトサイズ(Soft & Bite-Sized)」は、軟らかく口の中で容易に変形し、舌で押しつぶせる一口サイズの食品カテゴリーです。レベル7(通常食)とレベル5(ミンチ状)の中間にあたり、咀嚼(そしゃく)機能はある程度保たれているが、硬い食物や大きな塊の処理が困難な患者に適用されます。
日本嚥下調整食学会分類2021(JDS-C 2021)のコード4に概ね対応します(www.iddsi.org/framework)。
レベル6の定義と基準
テクスチャーの基準
- 形がある:食事として形を維持しているが、口内で容易に変形する
- 一口サイズ:1.5cm×1.5cm以下にカットされていること
- 舌と口蓋で押しつぶせる:完全な咀嚼は不要
- 粘り気がない:スティッキー(べたべた)でない
- 硬すぎない:フォークで一定の力で変形できる(叉テストで確認)
叉テスト(Fork Test)の方法
レベル6の確認には「叉テスト(fork test)」を使います:
- 普通の食卓用フォークを食材の上に置く
- 指で押してフォークの歯が食材に沈み込むかを確認
- 親指の指腹でフォークに圧力をかけて食材が変形するかを確認
合格:指腹の力で容易に変形する
不合格:硬くて変形しない → 調理方法の再検討が必要
JDS-C 2021(コード4)との対照
| IDDSI レベル | JDS-C 2021コード | 特徴 |
|---|---|---|
| レベル5(ミンチ状) | コード3 | 4mm以下のミンチ・軟菜 |
| レベル6(ソフト&バイトサイズ) | コード4 | 15mm以下の軟菜・全粥 |
| レベル7(通常食) | — | 通常の食事 |
JDS-C 2021コード4の目安:
- 主食:全粥(やわらか)・米飯(軟飯)
- 副食:軟菜(ゆで野菜・煮物)・豆腐・魚(蒸し・煮)
- 一口大:15mm以下を目安にカット
適応患者
レベル6が適応される主な状況:
- 軽度の咀嚼障害:歯牙欠損・義歯不適合・咬合力低下
- 軽度の口腔期嚥下障害:舌の可動域制限
- 回復期の段階的な食形態アップ:レベル5から通常食への橋渡し
- 軽度の認知症:食物を嚙み切る・一口大に自分でカットする能力が低下
- 疲労しやすい患者:硬い食品で疲弊しない
レベル6に適した食品・不適切な食品
適切な食品例
| カテゴリー | 食品例 |
|---|---|
| 主食 | 全粥・軟飯(硬めの粥)・うどん(柔らかく煮た) |
| 魚 | 白身魚の蒸し物・煮魚(骨を完全に除いたもの) |
| 肉 | 挽き肉料理(ハンバーグ・ミートボール)・鶏むね肉(煮物・蒸し) |
| 野菜 | ゆで野菜(人参・大根・じゃがいも)・かぼちゃの煮物 |
| 卵・豆腐 | 茶碗蒸し・木綿豆腐・薄焼き卵 |
避けるべき食品
- 硬い食品:生野菜・硬い肉・ごぼう・れんこん
- 粘り気が強い食品:餅・団子・ワカメ(咽頭に張り付く)
- バラバラになる食品:ひじき・乾燥米(口腔内でまとまらない)
- 皮のある食品:豆の皮・ミニトマトの皮(咽頭に残りやすい)
調理の実践的ポイント
軟らかくする調理法
- 長時間煮込む:繊維質の野菜・根菜は特に十分に火を通す
- 圧力鍋の活用:短時間で柔らかく仕上げる
- 電子レンジの蒸し機能:魚・鶏肉を蒸すと柔らかくなる
- 浸水:乾燥食品は十分に水で戻す
まとまりよく仕上げるコツ
- あんかけ・とろみをかける(食塊がまとまりやすい)
- ソース・汁気を多めにする
- バター・マヨネーズなど脂分を使って口の中の滑りをよくする
在宅・施設での実践
特養・老健のキッチンでの対応
JDS-C 2021コード4に対応した食事は、多くの施設で「軟菜食」「きざみ軟菜」などの名称で提供されています。重要なのは一口大サイズの徹底と、食品ごとの軟らかさ確認です。
在宅での工夫
市販の「シニア向け・やわらか食品」を活用することで在宅介護の負担を軽減できます。管理栄養士に相談することで、市販品選びのアドバイスが得られます。
安全な食事介助の実践ガイドとSTへの紹介タイミングも参照してください。
参考文献・引用
- ASHA(米国言語聴覚士協会). Adult Dysphagia. https://www.asha.org/practice-portal/clinical-topics/adult-dysphagia/
- IDDSI(国際嚥下調整食分類). The IDDSI Framework. https://www.iddsi.org/framework
- Logemann JA, et al. (1998). PubMed PMID: 26315994
- 日本嚥下医学会. https://www.jsdr.or.jp/
- 日本嚥下調整食学会. 嚥下調整食学会分類2021. 2021.
本記事は医療・介護専門職および家族介護者への情報提供を目的としています。食形態は担当言語聴覚士の指示に従ってください。