IDDSIレベルの移行とは

IDDSIレベルの移行(いどう)とは、嚥下(えんげ)機能の回復または低下に伴って、食形態・水分形態を変更することを指します。「レベルアップ(ステップアップ)」は機能回復に伴う通常食への移行、「レベルダウン(ステップダウン)」は機能低下に伴う嚥下調整食への移行です。

いずれの方向への変更も、必ず言語聴覚士(ST)による評価に基づいて行うことが安全管理上の原則です(ASHA, 2023)。


レベルアップの臨床指標

以下の基準がそろったときに、STはレベルアップを検討します:

身体・機能的指標

全身状態の指標

患者・家族の準備


レベルアップの実施手順

ステップ1:STによる評価依頼

主治医またはケアマネジャーがSTに評価を依頼します。

ステップ2:評価の実施

STがベッドサイド評価(BSE)または機器評価(VF/FEES)を実施します。

ステップ3:段階的な移行

一度に複数レベルを上げるのは避け、1レベルずつ移行します:

液体の場合

食品の場合

IDDSIとJDS-C 2021の対照:

IDDSIJDS-C 2021コード移行の方向
レベル4(ピューレ)コード2↓ 悪化
レベル5(ミンチ)コード3↑ 改善
レベル6(ソフト)コード4↑ 改善
レベル7(通常食)↑ 改善

詳細はIDDSIフレームワークを参照してください。

ステップ4:移行後の観察期間

移行後は2〜4週間、以下を観察します:

異常があればすぐにSTに報告し、元のレベルに戻すことを検討します。


レベルダウンの臨床指標

以下のサインが現れた場合は、STに相談してレベルダウンを検討します:

サイン意味
食事中・食後のむせが増加した嚥下機能の低下の可能性
食後に声が変わる(濡れた声)誤嚥または残留の可能性
体重が急激に低下した摂取量不足または誤嚥による食欲低下
繰り返す発熱・肺炎誤嚥性肺炎の可能性
食事を途中でやめる疲労・嚥下困難の増大
神経疾患の進行パーキンソン病・ALS等の進行による機能低下

重要:レベルダウンは安全のために必要な場合は「すぐに」行います。患者の意思に反する場合でも、安全性を最優先にSTと医師が協議します。


家族・介護職への移行時の指導

食形態が変わる際には、家族・介護職全員への周知と指導が必要です:

  1. 変更内容の文書での通知:口頭だけでなく書面で共有
  2. 調製方法の実習:新しいとろみの調製・フローテストの実施
  3. 調理法の指導:新しいレベルに適した調理方法の実際
  4. 観察ポイントの共有:移行後に何を観察すべきかを伝える

入院・入所・退院時の引き継ぎ

病院から施設・自宅への転居・転院時には、IDDSIレベルの引き継ぎが重要です。

引き継ぎ情報として必要な内容

安全な食事介助の実践ガイドSTへの紹介タイミングも参照してください。


参考文献・引用

  1. ASHA(米国言語聴覚士協会). Adult Dysphagia. https://www.asha.org/practice-portal/clinical-topics/adult-dysphagia/
  2. IDDSI(国際嚥下調整食分類). The IDDSI Framework. https://www.iddsi.org/framework
  3. Logemann JA, et al. (1998). PubMed PMID: 26315994
  4. 日本嚥下医学会. https://www.jsdr.or.jp/
  5. 日本嚥下調整食学会. 嚥下調整食学会分類2021. 2021.

本記事は医療・介護専門職および家族介護者への情報提供を目的としています。食形態の変更は担当言語聴覚士の指示に従ってください。