嚥下障害者向け経口栄養補助食品(ONS)の選び方:製品選択ガイド

経口栄養補助食品(Oral Nutritional Supplements:ONS)は、嚥下障害者が通常の食事だけでは不足するエネルギー・タンパク質・微量栄養素を補うための重要な手段です。しかし、嚥下障害者は粘度・食感・口腔内での挙動に厳格な条件があるため、全ての ONS が安全に使用できるわけではありません。

本稿では、嚥下障害者に ONS を選択・処方する際の評価基準と、日本で入手可能な主要製品の特徴を解説します。


1. ONS が必要になる状況

嚥下障害のメカニズムについては 嚥下障害のメカニズム を参照してください。以下の状況で ONS の導入を検討します。

ASHA も成人嚥下障害管理において、適切な栄養補充の重要性を強調しています (ASHA Adult Dysphagia Practice Portal)。


2. 嚥下障害者の ONS 選択基準

2-1. 粘度・形状(最重要)

IDDSI フレームワーク(https://www.iddsi.org/framework)に基づいて、患者の嚥下レベルに適合した粘度の製品を選択します。

IDDSI レベル粘度対象嚥下障害代表的な形態
Level 0 (薄い液体)水と同等嚥下機能が正常または軽度のみ低下一般的な液体 ONS
Level 1〜2薄い〜中間のとろみ液体誤嚥リスクありとろみ液状 ONS
Level 3濃いとろみ誤嚥リスクが高いとろみゼリー状 ONS
Level 4ピューレ状高度の嚥下障害ペースト・プリン状 ONS

薄い液体 ONS(Level 0)は最も多くの製品に該当しますが、液体誤嚥リスクのある患者には増粘剤を添加するか、初めからとろみ付き製品を選択する必要があります。

2-2. エネルギー密度

2-3. タンパク質含量

サルコペニア性嚥下障害の患者では、タンパク質含量の高い製品(1本あたり15〜20 g 以上)を優先します。BCAA(分岐鎖アミノ酸)を強化した製品は筋肉合成促進に有利です。

2-4. 味・嗜好性

毎日継続するためには、患者が「飲みたい・食べたい」と感じる風味が重要です。複数の味・形態を試し、本人の嗜好を尊重した選択が継続率を高めます。


3. 製品カテゴリーと特徴

3-1. 液状 ONS(Level 0〜1)

特徴:多品種・入手容易、栄養バランスが充実している。嚥下障害者には増粘剤添加が必要なことが多い。

代表的な製品例(学術的に言及される代表カテゴリー):

3-2. 半固形状・ゼリー状 ONS(Level 3〜4)

特徴:嚥下障害者に適した粘度、胃食道逆流予防にも有効、食事としての满足感がある。

日本嚥下医学会の基準に基づく学会分類2021対応製品も増えており、パッケージにコードが記載されているものを選択すると安全性の確認が容易です (日本嚥下医学会)。

3-3. 粉末 ONS

特徴:水・牛乳・ミキサー食に溶かして使用、食事への添加が可能。調製後の粘度調整が必要。


4. 增粘剤との組み合わせ

液状 ONS に増粘剤を添加する際の注意点:

増粘剤添加後は必ず IDDSI フォークドリップテスト・スプーンテストで粘度を確認してから提供します。


5. コスト・継続性の考慮

ONS は長期にわたる継続使用が多く、コストが課題になることがあります。


6. モニタリングと効果評価

ONS 導入後は以下を定期的に評価します。

安全な嚥下のための代償戦略STへの紹介のタイミング と組み合わせて総合的に管理します。


7. まとめ

嚥下障害者向け ONS の選択では、IDDSI 粘度レベルへの適合・エネルギー密度・タンパク質含量・嗜好性という4つの軸が重要です。管理栄養士がスクリーニング結果をもとに個別の製品を選択・評価し、ST が嚥下安全性を確認する多職種連携が、ONS の有効で安全な活用を支えます。


参考資料

  1. ASHA Adult Dysphagia Practice Portal — https://www.asha.org/practice-portal/clinical-topics/adult-dysphagia/
  2. IDDSI Framework — https://www.iddsi.org/framework
  3. Logemann JA et al. (2015). PubMed PMID: 26315994 — https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26315994/
  4. 日本嚥下医学会 — https://www.jsdr.or.jp/