とろみ剤の選び方・使い方完全ガイド
嚥下障害のある方にとって、液体のとろみ調整は誤嚥予防の重要な手段です。しかし「どの製品を選べばいいか」「何グラム入れればいいか」「温かい飲み物にも使えるか」など、介護者から多くの疑問が寄せられます。このガイドでは、とろみ剤の種類・選び方・正しい使い方を体系的に解説します。
とろみ剤の2大種類
1. デンプン系(第一世代)
主な成分:コーンスターチ、馬鈴薯でんぷん、タピオカデンプンなど
特徴:
- 時間が経つとデンプンが水分を吸収し続け、とろみが増す(経時変化あり)
- 温かい飲み物では溶けやすいが、冷たい飲み物ではとろみがつきにくい
- 白濁することがある
- 比較的安価
注意点:
- 調製後30〜60分でとろみが変化するため、飲む直前に調製することが重要
- 多量に使うと飲み物の味が変わりやすい
- 現在は第二世代(キサンタンガム系)に置き換えが進んでいます
2. キサンタンガム系(第二世代)
主な成分:キサンタンガム(微生物由来の多糖類)
特徴:
- 調製後のとろみが安定しており経時変化が少ない
- 冷たい飲み物にも使いやすい
- 透明感があり飲み物の見た目を損ないにくい
- 温度変化(0〜100℃)に強い:熱い飲み物・冷たい飲み物どちらにも対応
- 少量でとろみがつくため、飲み物の味への影響が少ない
注意点:
- デンプン系より高価なことが多い
- 溶かす際にダマになりやすいため、撹拌方法に注意が必要
日本市販品の比較
代表的なキサンタンガム系製品
| 製品名 | メーカー | 特徴 |
|---|---|---|
| トロミファイン | 明治 | 少量でとろみがつく。透明性高い。最も普及している製品の一つ |
| トロミアップ エース | ネスレ日本(ネスレ ヘルスサイエンス) | 冷水・温水どちらにも溶けやすい |
| つるりんこ Quickly | クリニコ(森永乳業グループ) | 素早く溶ける処方 |
| トロメリン | フードケア | 酸性飲料(果汁・乳製品)でも安定 |
| ソフティア G | ニュートリー | とろみ・ゼリーの両用途 |
代表的なデンプン系製品(現在も使用されているもの)
| 製品名 | メーカー | 特徴 |
|---|---|---|
| かんたん酢とろみ | キューピー | キューピーの食品系 |
| とろみ上手 | 各社 | デンプン系の汎用品 |
ガイドラインの推奨:日本摂食嚥下リハビリテーション学会(JSSD)は、とろみの安定性と再現性の観点からキサンタンガム系を優先することを推奨しています。
とろみの量の目安(IDDSI/学会分類別)
各製品の添付文書を必ず確認してください。以下は一般的な目安です(製品・飲み物の種類によって異なります)。
| IDDSIレベル | 学会分類 | キサンタンガム系の目安 |
|---|---|---|
| レベル1(少しとろみ) | コード1 | 200mLに対し0.5〜1.0g |
| レベル2(うすいとろみ) | コード2 | 200mLに対し1.0〜2.0g |
| レベル3(中程度とろみ) | コード3 | 200mLに対し2.0〜3.5g |
正確なとろみをつけるための手順
- 飲み物を先にカップに入れる
- とろみ剤を規定量計量して加える(スケールで計ることを推奨)
- 素早く15〜20回、力強くかき混ぜる(スプーンやマドラーで)
- 2〜3分待つ(キサンタンガム系は少し時間をおくと均一なとろみになります)
- 飲む前に再度軽くかき混ぜる
温度変化の影響
| 飲み物の種類 | デンプン系 | キサンタンガム系 |
|---|---|---|
| 常温水 | ○ 問題なし | ○ 問題なし |
| 冷水(冷蔵庫程度) | △ とろみが弱くなりやすい | ○ 安定 |
| 氷水(5℃以下) | △〜× 溶けにくい | △ 溶けにくい場合あり |
| 温かいお茶・スープ(60〜80℃) | △ 時間経過でとろみが増す | ○ 安定 |
| 電子レンジ加熱後 | × とろみが大幅に変化することがある | ○ 比較的安定 |
| 果汁・乳製品 | △ 分離することがある | △〜○ 製品による |
重要:電子レンジで加熱した飲み物にとろみをつける場合は、加熱後に冷ましてからとろみ剤を加えるか、電子レンジ対応製品を使用してください。
一日の水分摂取目標と計算式
嚥下障害のある方はとろみ液も含め、十分な水分摂取が不可欠です。脱水は嚥下機能をさらに低下させます。
必要水分量の計算式(一般的な目安)
方法1:体重ベース
- 成人:体重(kg) × 30〜35mL/日
- 高齢者:体重(kg) × 25〜30mL/日
方法2:エネルギーベース
- 1kcalあたり1mLの水分
計算例:体重50kgの高齢者
- 50kg × 30mL = 1,500mL/日(食事からの水分約700mLを含む場合、飲み物として800〜900mL以上必要)
水分摂取が不足しているサイン
- 口の中が乾いている、舌が白い
- 尿の色が濃い(濃い黄色〜茶色)
- 皮膚の弾力低下(ツルゴール低下)
- 意識がぼんやりする、倦怠感が増す
とろみ調整時のよくある失敗と対処法
ダマができる
原因:粉をまとめて入れた・かき混ぜが不十分 対処:粉を少しずつ入れながら素早くかき混ぜる。ダマができた場合はシェイカーや電動ミキサーを使用
とろみが思ったより薄い
原因:計量不足・デンプン系で冷水使用・かき混ぜ後すぐに提供 対処:計量スプーンではなくスケールを使用。2〜3分待つ
とろみが強くなりすぎた
原因:計量過多・時間経過(デンプン系) 対処:同じ飲み物を少量加えて薄める。デンプン系は調製直後に提供
飲み物の味が変わる
原因:とろみ剤の多用・デンプン系の使用 対処:キサンタンガム系に変更。製品によって味への影響度が異なるため比較検討
介護施設での管理ポイント
- 統一された製品・手順書の作成:施設内でとろみ製品を統一し、濃度ごとの計量表を作成する
- スタッフへの定期研修:手の力・かき混ぜ時間のばらつきを最小化
- IDDSI判定テストの実施:注射器テストで定期的に実際のとろみ濃度を確認
- 記録:使用製品・量・IDDSI レベルを食事記録に明記し、ケアの引き継ぎに活用
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最終更新:2026年5月13日