とろみ調整食品とは
とろみ調整食品(とろみ剤)は、水・お茶・スープ・ジュースなどの飲料や液体状の食品に加えて粘度(とろみ)を高める食品添加物です。嚥下障害のある方が液体を安全に飲めるよう、IDDSIの液体レベル1〜4に対応したとろみをつけるために使用します。
日本では市販のとろみ剤が多数販売されており、薬局・介護用品店・インターネット通販で入手できます。
とろみ剤の主な種類
1. でんぷん系とろみ剤
主な成分:片栗粉(じゃがいもでんぷん)・コーンスターチ・タピオカでんぷんなど
特徴:
- 温度によって粘度が変化しやすい(熱くすると粘度が上がり、冷めると変化する)
- 時間が経つとだれやすい(粘度が低下)
- 透明度が低く、食品の色・味に影響を与えやすい
- 比較的低コスト
使用上の注意: でんぷん系はアミラーゼ(唾液中の消化酵素)によって粘度が急速に低下することがあります。口腔内で唾液と混ざると当初よりとろみが弱くなるため、IDDSIの管理が難しくなる場合があります。
2. キサンタンガム系とろみ剤
主な成分:キサンタンガム(微生物由来の多糖類)
特徴:
- 温度変化に強く、冷たい・温かい飲料どちらにも安定して使える
- 唾液アミラーゼの影響を受けにくく、口腔内でも粘度が安定している
- だれにくく、時間が経っても粘度が維持される
- 透明度が高く、飲料の色・風味に影響しにくい
- IDDSI公式テストでの再現性が高い
現在の推奨: 国際的なIDDSIガイドラインおよび日本の嚥下専門家の多くは、安定性の高さからキサンタンガム系とろみ剤を推奨しています。
日本国内の主要製品
キサンタンガム系
| 製品名 | メーカー | 特徴 |
|---|---|---|
| つるりんこ Quickly | クリニコ(ネスレ) | 溶けやすく、ダマになりにくい。最も普及している製品の一つ |
| トロミアップ エース | フードケア | 少量で効果が出やすい。透明度が高い |
| ネオハイトロミール NEXT | ヘルシーフード | 溶解性が高く、風味への影響が少ない |
| スルーキング | ヘルシーフード | 固形物混合にも対応 |
でんぷん系・混合系
| 製品名 | メーカー | 特徴 |
|---|---|---|
| とろみエール | キューピー | でんぷん系。家庭用として普及 |
| かんたんトロメイク | ニュートリー | 混合系。価格がリーズナブル |
IDDSIのとろみレベルと目安の量
IDDSIの液体レベルは以下の4段階に分類されます(レベル0は通常の液体)。
| IDDSIレベル | 名称 | 特徴 |
|---|---|---|
| レベル1 | 薄いとろみ | わずかにとろみがある。フォークドリップテストで糸を引く |
| レベル2 | 中間のとろみ | スプーンに乗り、ゆっくり落ちる |
| レベル3 | 濃いとろみ | スプーンに乗って盛り上がる。スプーンを傾けてもゆっくりしか動かない |
| レベル4 | 極濃のとろみ | ほぼプリン状。スプーンを傾けても動かない |
製品ごとに推奨の添加量(g/100ml)が異なるため、必ずパッケージの指示に従い、家庭ではIDDSIテスト(フォークドリップテスト・スプーン傾けテスト)で確認してください。
とろみをつける際の注意点
- まず少量の水でとろみ剤を溶かしてから飲料に加える(ダマ防止)
- 加えてから30秒〜1分間よくかき混ぜる
- 時間が経つと粘度が変化することがあるため、作り置きは避ける(特にでんぷん系)
- 温度確認:熱い飲料への添加はやけどに注意
- 製品によって溶けやすい温度・液体の種類が異なる。牛乳・酸性飲料(果汁など)では粘度が出にくい場合がある
介護保険・日常生活用具給付
介護保険での対応
とろみ調整食品は介護保険の福祉用具貸与・購入給付の対象外ですが、一部の自治体では「日常生活用具給付事業」(市区町村独自事業)として購入費用の助成を受けられる場合があります。
日常生活用具給付事業
障害者総合支援法に基づく制度で、嚥下障害により医師から特別な食事管理が必要と判断された場合、とろみ剤や嚥下調整食品の購入費用の一部が助成されます。詳細は居住市区町村の福祉担当窓口に確認してください。
医療機関での処方
一部の医療機関では、嚥下障害の治療の一環としてとろみ剤を「食品」として処方・指示するケースがあります。入院中は病院側が提供することが多いですが、在宅では自己購入が基本です。
とろみ剤の購入先(日本)
- 調剤薬局・ドラッグストア:つるりんこ・トロミアップなど主要製品を取り扱う
- 介護用品専門店
- インターネット通販(Amazon・楽天市場等):まとめ買いでコスト削減可能
- 医療・介護用品の卸業者(施設向け)
まとめ
嚥下障害の方に適したとろみ剤選びは、安全な経口摂取の基本です。キサンタンガム系は温度安定性・口腔内安定性に優れ、IDDSIレベルの管理に適しています。日本国内ではつるりんこ・トロミアップ・ネオハイトロミール NEXTなどの製品が広く普及しています。言語聴覚士の指示のもと、IDDSIテストで実際のとろみレベルを確認しながら使用しましょう。