食形態の調整方法:自宅でできるミキサー食・とろみ付け基礎知識

嚥下困難のある方の食事を自宅で用意するのは、はじめは難しく感じるかもしれません。このページでは、IDDSI(国際嚥下調整食標準化イニシアチブ)のフレームワークに基づいた食形態調整の基本を、自宅で実践できるレベルで解説します。

大切なこと:食形態の決定は、言語聴覚士(ST)または医師の評価に基づいて行ってください。このページは評価結果に基づく「調製方法」の参考情報です。


食形態調整の基本的な考え方

食形態調整の目的は、嚥下困難のある方が安全に、かつ必要な栄養・水分を摂取できる食事を提供することです。

安全と栄養の両立

食形態を柔らかくしすぎたり、過度にとろみをつけると、以下の問題が生じることがあります。

必要最小限の調整で、できるだけ見た目・風味・食感を保つことが理想です。

方針の確認

まず、担当の言語聴覚士または主治医に以下を確認してください。


Level別:食事の調製方法

Level 7(一般食・軟食)の工夫

目標:通常の食事を、できるだけ柔らかく提供する。


Level 6(柔らかい一口大食)の調製

目標:前歯・歯ぐきで噛み切れる硬さ、1.5cm角以下。

おすすめの食材・調理法

食品調製のポイント
白身魚を蒸す・煮る。サーモン・鮭は脂があり柔らかくなりやすい
茶碗蒸し、半熟卵、炒り卵(硬くなりすぎないよう注意)
豆腐そのまま、または温めて。絹ごし豆腐が適している
根菜圧力鍋やスロークッカーで柔らかく煮る
パン牛乳・スープに浸して柔らかくしたフレンチトースト風
ごはん全粥(全粥:水5倍)または軟飯

フォークテストの確認:調製した食品をフォークで軽く押し、容易に潰れることを確認する。


Level 5(細かくほぐれる食・ミンチ&モイスト)の調製

目標:4mm以下の小さな塊で、湿潤でまとまりがある。

作り方の手順

  1. 食材を柔らかく加熱する(蒸す・煮る)
  2. フォーク・包丁またはフードチョッパーで4mm以下に細かくする
  3. ソースや煮汁でコーティングする(これが最重要):細かくした食材が口腔内でバラけるのを防ぐため、必ずソース・あんかけ・とろみのある煮汁と混ぜる

まとまりをよくするコーティング素材

注意:乾いた刻み食(パサパサしたそぼろなど)はIDDSI Level 5に該当せず、誤嚥リスクが高まります。必ず湿潤なコーティングを加えてください。


Level 4(ペースト食)の調製

目標:均一で滑らかなペースト。スプーンで形が保たれ、傾けるとゆっくり落ちる。

ミキサー食の作り方

  1. 食材を十分に柔らかく加熱する
  2. ミキサー・フードプロセッサーに入れ、少量の水分(だし・スープ・牛乳等)を加えながら撹拌
  3. 必要に応じてゲル化剤または増粘剤を加えて粘度を調整
  4. 目の細かいストレーナー(濾し器)で濾すと、よりなめらかになる
  5. フォークテスト:フォークの歯の間から均一に押し出されることを確認

ゲル化剤の使い方

ゲル化剤の種類特徴使用のポイント
寒天(アガー)植物由来、低価格。冷えると固まる。温めて溶かし、型に入れて冷やす。温かい食事には不向き。
ゼラチン動物由来。口溶けが良い。体温で溶けるため、口腔内での安全性が高い。冷蔵必要。
カラギーナン植物由来。温かい食事にも対応可能な製品あり。施設・病院向け介護食用製品に多い。
市販の嚥下調整食用ゲル化剤例:ネオハイトロミールEX、ソフティアGなど製品の指示に従って使用。量と温度管理が重要。

型成形(モールドフード)

ペースト状の食材を元の食品の形に成形することで、食事の見た目を保ち、食欲を維持できます。魚・肉・野菜の型(シリコーン製)が市販されています。


Level 3(ミキサー食・液状)の調製

目標:スプーンで形が保てる程度の粘度。均一で、流れ落ちない。

Level 4のペースト食より水分量を多くした状態です。作り方はLevel 4と同じですが、水分量を増やします。

重要:Level 3食はスプーンで食べ、コップから飲まないようにしてください。コップから飲むと流れが速すぎて誤嚥リスクが高まります。


とろみ飲料の作り方

とろみ剤(増粘剤)の選び方

市販のとろみ剤には大きく2種類あります。

種類特徴代表製品
デンプン系低価格。温度変化で粘度が変わりやすい(冷えると濃くなる)。つるりんこ、とろみナメらカ等
グアーガム・キサンタンガム系温度変化に安定。透明感があり、味への影響が少ない。ネオハイトロミールEX、ソフティアS等

施設・病院では一種類に統一することが推奨されます。製品によって必要な添加量が異なるため、必ず使用する製品のIDDSIレベル別添加量表を参照してください。

とろみ飲料の作り方(基本手順)

  1. 飲料(お茶・水・牛乳・ジュース等)を器に入れる
  2. とろみ剤を加えながら素早く混ぜる(とろみ剤を先に入れると塊になりやすい)
  3. 30秒〜2分間、スプーンで均一になるまでよく混ぜる
  4. 製品によって指定された待機時間(30秒〜3分)置いてから提供する
  5. シリンジテストでIDDSIレベルを確認する

IDDSIレベル別:とろみ剤添加量の目安(例)

製品によって異なりますが、一般的な目安:

IDDSIレベル水200mlへの添加量(目安)
Level 1(わずかにとろみ)0.5〜1g
Level 2(軽いとろみ)1〜2g
Level 3(中間のとろみ)2〜3.5g
Level 4(濃いとろみ)3.5g以上

必ず使用製品の指示書を確認してください。 製品間で必要量は大きく異なります。

とろみ飲料に関する注意点


自宅での食形態調整:よくある失敗と対策

よくある失敗原因対策
ミキサー食に塊が残るミキサー時間が短い、水分量が少ない2〜3分以上撹拌する。水分を増やす。濾し器を使う。
ペースト食がパサパサするゲル化剤の量が多い、または水分が少ないゲル化剤を減らし、だし・スープで水分補給。
とろみが均一につかない混ぜ方が足りない、待機時間が短いよく混ぜ、待機時間を守る。デンプン系はとくに待機が重要。
時間が経つととろみが変わるデンプン系とろみ剤の温度変化グアーガム系に変更を検討。提供直前に作る。
食欲が落ちた見た目が悪い、味が薄い型成形、コンパクト盛り付け、だしや旨味の強化。

役立つ道具

道具用途
ハイパワーブレンダー(例:バイタミックス、ブレンドジェット等)Level 3〜4のなめらかなペースト作成
フードチョッパーLevel 5の細かく刻む作業
10mlルアースリップシリンジシリンジテスト(とろみレベル確認)
デジタルキッチンスケールとろみ剤の正確な計量
シリコーン製食品型モールドフード(型成形ペースト食)
ストレーナー(目の細かい濾し器)ペースト食の滑らか化

関連ページ


最終更新:2026年5月13日

免責事項:このページは一般的な教育情報の提供を目的としており、個別の医療アドバイスではありません。食形態の決定・変更は必ず言語聴覚士・管理栄養士・医師の指導のもとで行ってください。